2025年8月31日日曜日

MULTI PalmsizerⅡであります。(その3)

というわけで宿題が残りました。

〇マイクジャックの外部マイク用の配線と、スピーカの内部と外部の切り替え部分の精査

なんで精査かというと、電池を押し込んだりいろいろやっているうちに、あそこやここのリード線の半田付けが取れて内部スピーカから音が出ない!なんてことに。電池の押し込みと音の復旧のために切り替えスイッチの半田を外したりして、もう一度リード線の一本一本を確認する羽目になっています。作業の前に画像をとっておけば良いのに、簡単に終わるとナメるとこうなるという典型例です。

ロジック的には難しくなく、本体スピーカに行っている配線を外部と切り替えるようにスイッチを使うこと、PTTはあの線とあの線をショートなのでその旨配線をすれば良いし、そんなに大変じゃないと思うんですが、重たい腰を下ろす前に一気にやる必要があります。 

本体内蔵のスピーカ(兼マイク)から分岐させて、スピーカと、あの線とあの線からPTTを取り出してテストしてみると、音も出て、送信する際にはスピーカからも変調がかかるので、これでOKということで終了。

〇スピーカの大きいスピーカーマイクの入手

今風のではなく、少し古い大きなスピーカのついているのを探しますかね。SMC-30あたりが良さそうな気がするので確保します。

(追記)確保しました。古いので、筐体もスピーカーマイクとしては大きめで、立派なスピーカが付いてます。受信音はまあまあ、送信音はそれなりです。

〇パネル取り付け用DCジャックの取付

前述のとおり、元々のマイクジャック用の穴を使ってDCジャックを外に出さないと外部電源で使えなくなるというか、電池の充電ができなくなるのでなんとかしないといけないのです。これは秋葉原に捜索の旅に行ってきました。マル信のDCジャックに良さそうなのがあったのでラジオデパートの門田無線で購入です。

また、作業中にスピーカの内外切り替えスイッチが壊れてしまったのですが、幸いにして別用途で同じようなスイッチを買ってきていて事なきを得ています。でも、ツマミ部分が短くて、取り付けた状態で操作しようとするとつまようじかボールペンが必要に…(※後からツマミの長いスイッチを手配して解決しました。(その2)のスイッチ部の画像はツマミが短いスイッチに置き換えた直後のものです。ツマミの先っぽが低くて見えにくいでしょ。)

見てくれに関してうまくリカバリできたと思います。元からこうなっていたに違いないと自分で思い込むことにして、とりあえずはひととおりの整備完了です。もちろん、DCジャックの配線は、なんでそうしたかよくわからないセンターマイナスから標準的なセンタープラスに変更しています。幸いにして完全にジャックの端子が浮いているので、プラスとマイナスをひっくり返して配線するだけで済みました。下の画像、こちらから見て右側面下側の白いところは「このジャックはセンタープラスだよ」と書いたラベルです。

というわけで、完成です。スピーカーマイクのコネクタが標準状態とは反対側から出ていますが、ご愛敬ということで。 

スピーカ部分のパンチ穴がかわいらしいPalmsizerⅡです。

MULTI PalmsizerⅡであります。(その2)

次の段階です。

この無線機を実用的に使うためには解決しないといけないポイントがあります。

〇純正の電池はニッカド。昭和53年モノなので、ヘタった結果、以前の所有者により廃棄されて付属していません。現物があれば電池の規格がわかるのですが、残念ながらカタログから想像するしかありません。

最初は23Aという小さな12V電池を並列で5つ繋いで1時間程度の運用ができるようにしました。とりあえず動けばよいということであればこれでも良いんですが、保証を受けて届出をしちゃったので、もうちょっとマトモな電池にしたいところです。

カタログ画像や本体の電池スペースの寸法を測りつついろんなサイトを見てみると、単三の2/3の長さの2/3AA電池という規格があるようです。このサイズでニッカドもあるんですが、ニッカドってメモリ効果ですぐにダメになるので、現代ならニッケル水素電池を使いたいですね。2/3AA規格でもニッケル水素電池を見つけることができました。

裸で入れるのは危険なので、バッテリー用の収縮チューブ(電池を包んでドライヤーで温めると縮んでそれっぽくなるんですね)で電池パック状にしてから入れることにします。
初めての電池パック加工だったので想定よりも大きくなってしまいました。無理やり押し込んでなんとかしました。次(は無いはず)はもうちょっと上手にできるかも。


〇外部マイク端子が現在の規格ではなく、互換のプラグを見つけられません。プラスチックの筐体に穴をあけて取り付けられているので、穴を広げて普通の4ピンマイクジャックにしても良いのですが、ダメ元で同じくらいのサイズの外周12mmの「航空コネクタ」というのを買ってみました。でも1mm大きくてこれも合わず。これは普通の4ピンプラグとの比較。

モンキーで挟んでいるのは、左が航空コネクタ、右がPalmsizerⅡに付いていたコネクタです。

仕方がないので外部マイクジャックの穴の拡張工事を行うことになりました。リーマーがあるので、この手はすいすいっとできます。プラスチックなので力も要らず。きれいにできたじゃんと悦に入っていると、ふと違和感が。

外部マイクジャックの穴と対照の位置に同じような大きさで丸くDCジャック用の穴が開いてるのですが、誤ってDCジャック用の穴を拡張(=破壊)してしまいました。マイクジャックの取付はできたものの、反対側の元々のマイクジャック用の穴ではDCジャックの位置決めができなくなってしまいました。接着剤で留めるのもどうかと思うので、11mm径よりも大きいパネル取り付け用のDCジャックを探さないといけなくなりました…

すでに破壊後の画像。航空コネクタのジャックを仮止めしているところに、本来はDCジャックがあるはずでした。 こうなったら両方の穴を拡張してなんとかするしかないです。

〇外部マイク端子に来ている4本の線がよくわかりません。回路図にもこのへん載っていないんです。回路図はPalmⅡのものにPLL部を書き加えただけのもののようで、PalmSizerⅡの実態と合っていないようです。

上のブロックダイヤグラムにはコンデンサマイクと思しきものとスピーカーマイク両方の絵が描いてありますが、下の定格には「内蔵スピーカー兼用マイク」とあります。

元々のマイクジャックの裏側に4本来ているということは、①マイク②PTT③アースとグランド④音声くらいのものだと思うんですけど、なんか違うんです。一部の線同士をショートさせると送信になるので、これがPTTとグランドなんだなというのはわかりますが、マイクのラインがよくわからないんですね。

また、この無線機には、スピーカの外部と内部の切り替えスイッチがわざわざついています。FT-207の例では、外部スピーカーマイクをつなげると、本体と外部と両方から音が出ていて、マイクについても両方から拾っていたような記憶が。

マイクとスピーカが共用(というかスピーカでしゃべる)という前提で考えると、スピーカの内部と外部の切り替えは、そのまま「マイクとスピーカ」の外部切り替えなんだろうなと思い始めました。
外部マイクに使うのは、普通のダイナミックマイクみたいに薄いフィルムが振動するのもではなく、少し強度のあるスピーカである必要があります。使っていないスピーカーマイクを流用するとして、これのマイク配線は使わず、スピーカ部分だけをマイクとスピーカとして使うように配線する必要がありそうです。

【追記】ダイナミックスピーカ兼用マイクですから、今回は航空コネクタに置き換えましたが、普通の4ピンメタルジャックに置き換えたとして、ピンアサインをそのまま、これまた貴重な金色っぽい変な色の福山のMULTI400Sなどのモービル用のダイナミックマイクを落札して繋ぐと、受信時にダイナミックマイクのフィルムを破いて壊すといったことが想像できます。なので、互換性を考えずに航空コネクタに置き換えてよかったんでしょうね。

たぶん、メーカー側も、その当時に福山のほかのマイクをつないで壊すことが考えられたので、4ピンマイクプラグが物理的に挿さらない、変なコネクタを使ったんだろうなと想像しています。

 

続きます。

MULTI PalmsizerⅡであります。(その1)

CQ誌1978年(昭和53年)9月号の広告です。福山電機から面白いハンディが出ました。

既存の2m水晶発振式ハンディ(手で持てるハンドヘルド機)であるマランツのC145に比べてかなり小さく、八重洲の水晶発振式のFT-202に比べても小さい、MULTI PalmⅡがまず出ました。この水晶発振式のPalmシリーズは、福山一流の無線機らしくない無骨ではない、かわいらしい(とはいえファンシーなものではありません)好感の持てるデザインでした。
無線機のデザインから少し離れた良さという意味ではマランツの機種も良いものがありますが、福山のデザインはまたこれとも違うんですね。マランツは繊細な良さ、福山はかわいらしい感じです。そのかわいらしさは、TS-600/700のデザインと通じるものがあると思います。

先行したPalmⅡの後、430MHz用のPalmⅣ(水晶発振6ch)とほぼ同時に出たPalmsizerⅡは、ハンドヘルドとしては初めてのPLL機です。同じ年にTR-2300がPLLで出ていますが、これはハンディと呼称しているものの肩掛けのポータブル機です。翌79年にハンドヘルドではFT-207がPLLで出てきますが、それに先んじての発売でした。

PalmsizerⅡは、PLLユニットを取り外してPalmⅡのフロントパネルに交換するとPalmⅡに変身することができます。PalmⅡは同じようにPLLユニットをつけるとPalmsizerⅡに変身できるという、面白いコンセプトです。
PalmⅡを設計した段階でそこまで目論んでいたのかは不明ですが、多チャンネルが進む2mでPalmⅡの6chの水晶発振は現実的じゃないですから、PLL化は視野に入れていたんでしょうけど、先行したPalmⅡの電源や送受信の基本部分は共用して、発振段にPLLを増設して合体ロボットのように変身とは面白いです。

今年、ようやくオークションで入手できました。ごくたまに出品されるのですが、見逃しているうちに終わっていることが多く、今回はうまくタイミングが合いました。CQ誌の広告で見てから何年ぶりかな、一度、ハムフェアで販売店ブースのジャンク500円の箱の中にあるのを見たことがあったのですが、動きそうな感じではなかったので見送って以来の現物を触ることになります。

わりときれいな個体で、回路図入りの取説もついていて、申請は楽にできそうです。スペアナを持っていないので、そのうちJARDで測ってみようかと、とりあえずは調整を。IC-9700という素晴らしいスペアナもどきがあるので、周波数や近接周波数のスプリアスを見ることができるのは時代のせいですね。

PLLの周波数は良さそうです。9700のスペクトラムスコープの真ん中で針が立ちます。出力は300mWくらいかな、もうちょっと出ると良いなとドライブやファイナル回りのトリマを回して500mWくらいになりました。これくらいなら見回せる範囲での連絡くらいなら使えるでしょう。プラスマイナス500kHzくらいのスパンでみると、ちょっとニョキニョキ針が生えています。これが規定値以下かどうかが焦点ですね。

うまくタイミングが合って、JARDの計測サービスをやる水木曜日に休めたので、さっそく行ってきました。無変調で測る帯域外(占有周波数対幅の外側でかつスプリアス領域の内側)領域、高調波や低調波のスプリアス領域ともに適合でした。出力は自宅のSX-1000で測るよりも出ていて700mWでした。これなら繰り上げして1Wと思い込んで良いでしょう。一応2mのBPFも探して持参したのですが、使わずに済みました。ニョキニョキも規定値以下ということでよかった。リニアは繋げませんね。

で、計測データをもらって、送信機追加の届出をして、免許的には使えることになりました。 

続きます) 

2025年8月24日日曜日

ハムフェア2025

2025年のハムフェアです。昨年から場所を有明GYM-EXに移して2度目になります。東京ビックサイトに比べて交通的には不便になりますが、これもだんだん慣れるんでしょう。

今年はUnidenが戻ってきました。70年代のほんの一時期ですが、輸出向けのCB機のノウハウを投入して、HF機と2mのモービル機で参入してきましたが、すぐに撤退していきました。アマチュア向けって商売としてはめんどくさそうですしね。


こちらはアンケートに答えてもらえたUniden名前入りキャップ。黒に黒の刺繍ってカッコいいじゃないですか。もらえたのがうれしくてかぶってみたのですが、私の頭が大きいのでちょっとサイズが合わないのが残念です。でもかぶるぞ。そのうち似合うようになると思います。

ユニデンの技術の方がいらっしゃったので、展示されているFCC規格の40ch機、ハンディ機とモービル機を国内アマチュア向けの10mトランシーバとして出せません?とお願いしてみました。彼らも企業ですから採算が取れないと難しいでしょうけれど、テスト的に出してくれないかなあ。

ユニデンブランドのピカピカした無線機で合法的に電波を出すなんて、なんか楽しくないですか? 一緒に技術の方に話をしたにゃん氏はハンディ機のほうが切り口として良いという提案をしていました。ユニデンのハンディ機も出来がよさそうですね。

出展したブースの数は去年よりも増えて、あと、感染症の流行にも慣れたんでしょうね、人出が多かったです。あまりにも混んでいるので、初日は早々に撤退、埼玉時代の友人と飲んでました。二日目は少しは空いているだろうということで、会場をゆっくり回って、お祭りを満喫して帰ってきました。

  
今年は、先日JARDで計測してきた(帯域外領域、スプリアス領域ともに現行基準に適合!)こいつを見せびらかせるご披露するつもりで会場に持ち込んだんですが、首から下げるとけっこう重たく感じるんですね。年齢のせいもあるんでしょうけど、TH-59なんかと比べるとやっぱり重たいです。でも、会場で144MHzを聴いていたのですが、430よりも空いていて、1200と同様に連絡用に使えそうだなという感触がありました。144は飛ぶので、パワーを絞っても届くので良いですね。
来年は本格的にこいつでやりますか!なんて思うんですが、電池の内蔵方法と外部マイクで悩む必要があります。このPalmSizerⅡの話は改めて書きたいと思います。
 

2025年6月25日水曜日

そして風向きは再びTS-590無印に

変なタイトルですが、まずは経緯を。

TR-9300みたいな古くて小さいトランシーバは好物の一つで、これで50のAMに出てやろうといろいろとやっていたのですが、AMでのQSOの際に、相手局の変調が浅くて、信号強度はあるのに了解度が低くて、低電力変調ではない局に対して「変調を深くして欲しい」とお願いすることがありました。

先週の日曜日に、友人に50のAMでテストさせてよと電波を出してもらって聴いていたのですが、ノイズが少なく状況は良いはずなのに、入感する信号の強さの割りには了解度が低く感じます。相手局はTS-590のGタイプにMC-90だったのですが、MC-90なのでやさしい音だからスピーチプロセッサを入れて固い音にしたら了解度が上がるかもと伝えたところ、状況は変わらず。ならばということで、ゲインはあるけど音の悪いMC-43Sで喋ってもらっても了解度があがりません。言っていることの7割くらいを理解できる了解度でしょうか。信号はSメーター3つでノイズがほぼ無しの状況なので、もっと了解度が高くても良いはずです。 

ひょっとしたらこちらのせいなのかなと、試しにこちらもTS-590無印にしてみたところ、ばっちり聴こえます。これまでの霞がかかったような変調とは違って、MC-43Sの音の悪さまでわかるようになりました。※両機ともにSP-70を繋いでそちらで聴いています。

590にした途端に良く聴こえて、今まで何だったのと唖然とするわたくし 

9300では他のモードではとくに了解度が低いという印象はなく、AMのみの話です。なんでしょうね。受信する帯域の広さに問題?広すぎると了解度が低い場合はあります。おそらくですが9300は定格の6kHz幅で聴いているんだと思います。590のAM時は、少しだけ狭くして4-5kHz幅で聴いているので、その差なのかもしれません…こう書いていると冷静に分析できますね。程よく狭いから了解度があがったのか、だったら納得ですが、ちょっと気が抜けました。

9300から590に受信機を変えてみる実験に付き合ってくれた友人に、「9300で不自由を楽しむところはあるけど、590にした途端になんでこんなに良く聴こえるのよ」と言ったところ、 「817で同じような経験をしてました。わかります」と。やっぱりそうなんですね。理屈どおりなんでしょうけれど、小さいトランシーバを使うのは不便でも楽しいんだけど、この楽しさは快適とは違う方向なんですよ。

590にしたら聴こえたということに衝撃を受けて、9300のAMモードの追求は中止です。だって聴こえないんじゃしょうがないですから。送信以前の問題ですからね。9300は外に持ち出すことを踏まえて、AM時のキャリアを少し増やして、変調時にキャリアが減らない程度の出力に増力方向で再調整することにします。

で、TS-590無印を再び出してきたので触り始めたのですよ。AMで送信する場合にどのマイクを繋ごうかと考えます。

〇MC-90:これがベストなのはわかりきっている話。ただ、今はIC-9700に繋がっていて、いちいち590に繋ぎなおすのは面倒です。できれば違うマイクに。

〇IC-SM2(ノーマル):9300のAM送信で活躍が始まったSM2ノーマルですが、590で使おうとすると回り込みが起きました。コンデンサマイクってたまにこうなるんですよね。なのでお蔵入りに。

〇アツデンDX-344:9300ではトークパワーが見込めずお蔵入りになっていたところを出してきました。ちょっと繋いでみたところ、特に不具合はなく、使えそうです。ダイナミックマイクのアンプ入りだからでしょうか。 

画像はSSBになってますね。ちゃんとAMでテストしています。
 

そこで、お蔵入りだったアツデンDX-344を持ち出してきました。これでスピーチプロセッサを入れて使ってみたらどうかなということで、ほぼ59-59でQSOできるOM局が出ていたのでテストに付き合ってもらいました。マイク(スポンジのカバー)に対しては0-5cm距離ではきはきとはっきり喋ります。この手のテストって、だいたい熱が乗ってくるとゼロ距離になります。

〇DX-344:MC-90と比べる前は特に印象は無しで、普通にこういう音の人は多いということ。MC-90との比較では、プロセッサONのとき、MC-90と比べると音が暴れているというか、荒っぽい音。 OFFのとき、ONのときとあまり印象が変わらない

〇MC-90:プロセッサONでもOFFでも、音の輪郭がはっきりしている。声の線は細く感じる。プロセッサONでも歪みを感じるところまではいかない。ゲインが低いせいか。

というコメントと考察でした。MC-90との比較なのでDX-344には不利だったかな。あと、TS-590無印では初めて経験したんですが、DX-344でプロセッサ無しではっきり喋ると、送信信号に声が乗るまで少し時間がかかりました。頭切れみたいな感じです。送信できているので頭が切れているわけではないのですが、音声が乗るまで時間差を感じます。これ、ALCが効いているんですね。スピーチプロセッサを入れるとそれはありません。 DX-344はプロセッサONで、自分の信号が弱くて相手にとっての了解度を上げたいときに使う用途になりそうだな。

MC-90を使ってみると、やっぱりどうしてもこっちを使いたくなります。IC-9700と切り換えができるようにして、もう少しスピーチプロセッサを深くかけられるように設定を見つけてみるのも面白そうです。週末が楽しみになってきました。 

 
※TS-590無印のAM時の設定値は、パワーは25W、キャリアは50、スピーチプロセッサのレベルはin/outともに50。スピーチプロセッサを入れないときのマイクゲインは70-80。送信イコサイザは私の声質を踏まえてHb2。
パワー25Wにしておいて、キャリア設定を50から設定値を減らしても、通過型電力計の振れは減らないのは不思議です。
あと、通過型パワー計と安定化電源の電流計は変調をかけるとマイナス方向に振れます(パワー計は数ワットくらい、電流計は針1本分くらい)が、私の信号を受信してもらっている相手方では、変調時にSメーターが変調に応じてさらに振れる(DX-344)か動かない(MC-90)そうです。いわゆるマイナス変調にはなっていないということで安堵。

2025年6月4日水曜日

TR-9300でAMを送信する(続)

何年ぶりのTR-9300でしょう TR-9300でAMを送信する の続きです。

左から、DX-344、元IC-SM2、ノーマルIC-SM2、MC-90


ちょっと基本方針を確認します。

目的はTS-600やTR-9300でのAMの送信で、きれいな音をお届けするのではなく、多少歪んでも、スプラッタをまき散らさない程度の歪で、私の電波が弱かったり、ノイズに埋もれそうになっているときにある程度の了解度をキープすることです。カツミのマイクコンプレッサを使っても良いのですが、少しでもゲインボリュームを開けると歪が大きいので、これは使わずに、できれば無線機本体のマイクゲインの設定とマイクやマイクアンプでなんとかしたい、というものです。

本来であれば、この手のマイク選びではMC-90が候補として筆頭にあがりますが、TS-600にしろ、TR-9300にしろ、骨とう品になりつつある筐体の昔の狭いクリスタルフィルタにマイクアンプ段の組み合わせなので、MC-90を付けても期待したような鮮明な、解像度の高い音にはならないのではと思っています。また、10Wの無線機ですから、AMの場合にTS-590S無印のようにキャリア25W+内蔵スピーチプロセッサを入れて送信できるわけではないので、まずは相手に届かせるというところから考えないと、先方には了解度の低いおとなしい音になってしまいます。

うちのMC-90には台座にエレキットのマイクアンプを入れています。入れるマイクアンプは、もちろん自作の設計の一石程度のアンプでもOKです。これは主にTS-590のFMでの運用を意図して入れました。以前はマイクアンプ用に006Pを内蔵させていたのですが、最近のIC-9700のFM音質迷走の過程で8ピンマイクコネクタ(ケンウッドなら5番)から電源を取るようにしてしまったので、マイクアンプを使いたい場合には4ピンや6ピンの無線機からは電源が取れません。TR-9300は、コンデンサマイクを使えるように、余っているマイク5番ピンに6-7V程度が出て来るように中を配線したので、8ピンジャックを経由して6ピンプラグに変換すれば使えはするんですが。…あれ、9300でMC-90使えるじゃん。

えー、気を取り直して。主題はAMなんです。AMの送信についてつらつら考えてきましたけど、でもまずMC-90にマイクアンプを入れたAMの音を聴いてみたいな。 

で、聴いてみました。TR-9300で送信して、これをTS-590S無印でヘッドフォンを使って聴く方法です。590は同じ無線機机の近くに置いてあるんですが、少し離れているのでせいぜいメータ9つくらいで受信することになり、ヘッドフォンで聴けばハウリングも無くちょうどよさげです。

〇MC-90の音は素直できれいです。最初は台座のマイクアンプ無しでしゃべってみましたが、それだとおとなしくきれいなMC-90らしい音なのですが、やはり物足りません。マイクアンプを入れてみると、マイクのエレメントにゼロ距離でしゃべれば、入力過大気味ゆえの歪が少し出ます。でもこの歪の加減ですが、音の解像度が下がらないのはさすがで、これ使いたいなあと思わせます。AMのときにはもう少し歪ませたいですが、これ以上歪ませないで使いたい気分になります。例えると、MC-90を繋いだTS-950SDXでSSBで送信するときにスピーチプロセッサを軽く入れて少し歪ませたような音みたいな感じです。今回MC-90はIC-9700に繋ぎっぱなしなので、9300での使用は我慢することにします。やっぱりMC-90は良いですねえ。ケンウッドの無線機だと良い音が出るなあと感心します。

〇次に古いアツデンのDX-344を持ち出してきました。これは単一指向性ダイナミックマイクのアンプ入りです。経年劣化でゲインが少なく感じますが、程よい大きさに設定してしゃべってみると、MC-90よりおとなしい音でした。ちょっと物足りないかな。

〇さらに、IC-SM2のECMを取り外し、これを科学教材社の66円のものに変更してある、少し前までTM-833で常用していたマイクを使います。見てくれはIC-SM2なので、ここでは元IC-SM2と呼称します。SSBやFMでは想定どおりのきれいなコンデンサマイクっぽい音です。でも、このマイクはマイクアンプを取り去っているので、AMでもう少し入力を大きくして歪ませたいというのには少し足りません。 (※)科学教材社の66円ECMはマイクのホット、コールド、+電圧の3端子仕様)です。元SM2の台座を開けて、マイクコネクタからの配線を、マイクのホット、コールド、電圧、PTT、PTTのグランドにして、台座とフレキシブルパイプの連絡もECMの3端子化に伴って配線をやりなおしています。インピーダンスマッチングなどは全く考えていませんが、833やTR-50ではそれなりに良い音で使えています。

〇最後に真打、ここで再び入手したノーマルのIC-SM2です。マイクコネクタのピンアサインをケンウッド仕様に変更しただけのオリジナルです。元々のECMもそのまま、アンプもそのまま台座に入っています。

実は、IC-SM2って長年、それこそIC-502で開局した頃から音が悪いと思い込んでいました。IC-502や、202でも良いのですが、これで送信するIC-SM2の音を聴いたことのある人がどれくらい残っているかわかりませんが、 狭い音がしていた記憶がありませんか。そんな印象をそれこそ半世紀近く持ち続けていたんですが、先日、IC-9700にSM2と同じ仕様のIC-SM5を繋いで出てきた友人の声を聴いて、あれ?そんなに悪くないぞ??と思い直すに至りました。そっか、音が悪かったのは主に502のほうに原因があったんだと気づいたのです。それでも、このときに最初に配線だけをケンウッドにして試したときには、良い音だとは思わなかったんだよなあ。502のときの先入観があったんですかね。

今回またIC-SM2を入手し、ケンウッド配線にして使ってみたんですけど、AMの場合、台座の中のアンプのボリュームを軽く開けた状態で程よい歪を伴った声が聴こえます。もっとボリュームを開けるとすぐに下品方向に変わりますが、マイクアンプを軽く使うくらいならOKでしょう。マイクから口を離せばさらに下品さは軽減できます。SSBやFMでも普通に使える音です。MC-90のようにきれいな解像度の高い音質とは違いますが、そうですね、アドニスのコンプレッションマイクのゲインがある音や、最近のアイコムのSM30などの音がイメージに近いでしょうか。アドニスやSM30も軽く使えば同じなんでしょうね。上品ではありませんが、全体的に圧が出るような感じの音です。また、カツミのマイクコンプレッサを無線機とマイクの間に繋ぐよりもコンパクトで良いです。 

というわけで、送信音が貧弱な昔の無線機にトークパワーが欲しいときに使えるマイクとしてノーマルIC-SM2をしばらく使ってみようかと思います。TS-600では別に電源を引かないと使えないので、9300でのアプローチ悪あがきですね。アスタティックのロードデビルの高音域強調とは違う方向の音質ですが、私の電波の弱いときに了解度維持の助けになるでしょうか。 乞うご期待。

これを書きながら、科学教材社の2端子タイプのECM(53円!)を見つけてしまったので、これをノーマルIC-SM2に付けてみたいなと思い始めてしまった…

2025年6月2日月曜日

TR-9300でAMを送信する

何年ぶりのTR-9300でしょう の続きです。

TS-600の修理と調整をしてEsシーズンに入ったのは良かったのですが、新たな不具合が。送信中にAFが動き続けていて、自分のしゃべる声がスピーカーから聴こえるようになっちゃいました。体の良いモニタ機能と考えるのも良いのですが、しばし600はお休み。

TS-590無印でも良いのですが、どうも新しい無線機では楽しくないので、TR-9300の出番になります。この9300は、マイクのエレメントを科学教材社の66円のECMに変更してあります。インピーダンスマッチングとかは全く考えずに、マイク配線に直結して、別途電源を引いているだけなのですが、純正のダイナミックマイクMC-40S(MC-43Sと同じ)の尖った音とは違って、マイルドで深い変調がかかっているようで気に入っています。

とはいえ、AMで送信することを考えると、もう少し考える必要があるかなとあれこれ始めました。まず、AM時の出力ですが、仕様では3Wとあります。この個体を実測してみると4Wを指します。そして、変調をかけてみるとRFメーターはしゃべりの大きさに応じて振れるのですが、パワー計や電流計をみると変調がかかるごとに数値が下がります。いわゆるマイナス変調ってやつです。もう少しキャリアを減らして、変調がかかるとそれに応じてパワーが出るようにしたいところです。 

上側の蓋を開けて、奥側のドライブユニットを触ってみます。こちら(とてもありがたい) によれば、AMのキャリア調整はVR7、マイクゲイン調整はVR6です。


うちの個体では、変調をかけても電流が下がらない設定は、

〇TR-9300単体で使う場合 キャリア2W、変調をかけて2.5Wくらいか。せいぜいキャリア2.5Wの変調時3Wくらいまで。M57735でこんな感じですから、RJX-601の2SC1306で3Wはやりすぎですね。 

〇HL-66Vを繋ぐ場合 キャリア0.5W、変調時に1.5Wまでに留めると電流は下がらず、この場合66Vの出力はキャリア10Wで変調時15W

でした。 低電力変調だとこんな感じなんでしょうかね。キャリア調整と合わせてマイクゲイン調整をしました。もうちょっと深くしたいとまわしていたら、開く方向に回し切った状態になっています。歪んでいないのでまあ良いでしょう。

いつもリニアの電源を入れっぱなしということでもないので、キャリアを2.5Wくらいにしておきます。この状態だとHL-66Vを通すとキャリア30Wになりますが、しゃべると電流が減って、いわゆるマイナス変調になります。でも仕方ないということにします。

この状態でS7つくらいで入感している局を呼んでみたのですが、クリアだというレポートをもらいました。 本当は友人と長時間シビアにあーでもないこーでもないと調整したいところですが、50のAMが強くもなく弱くもない感じで程よく届く友人がいないので、機会に恵まれません。至近距離の友人にATTとRFゲインを絞って聴いてもらうのも良いんですが、程よく弱いところをノイズ交じりで聴いて欲しいんですよね。難しいです。

あとは、もう少しゲインが高いマイクを使ってみたいと思っています。カツミのマイクコンプレッサーを出してくるのも良いのですが、コンプレッションのゲインを上げると簡単に歪むし、かといってゲインを下げると音が出なくなったりと難しいです。これを使うと簡単に実現できるハイパワー市民ラジオの音は、近くでモニタするとひどいものですが、あれ、実際に遠いところの局が何を言っているのかはよくわかるので、受信状況が悪いときには効果があるんだよなあと関心します。もちろん彼らは出力も大きいんでしょうけれど。エコーも効果的ですよね。アマチュアバンドでやると下品になるので考えものではあります。でもたまにエコーを利かせている人っていますよね。

「マイナス変調」って実践的にはどの程度OKなんでしょう。変調をかけるごとに盛大に電流が下がり、受信側のSメーターもパワーが食われるがごとく下がるという状況があるにしても、了解度が下がらない信号であれば、カッコは悪いですがアリなのかなとも思っています。

送信側では変調時に電流が下がって「マイナス変調だな」と思っていても、受信側ではちゃんと変調に応じてSメーターが数値の大きいほうに振れている場合もあるでしょう。これも結局、実際に受信してもらわないとわからないんだよなあ。