こんにちは。また、カッコよいスタイルのついている部分があるエントリーです。少し前に「八重洲流数値演算型マイナス変調」の話を書きましたが、これは
FTDX10などの数値演算型低電力変調はいわゆるマイナス変調ではなく、PEPメータで計測すると搬送波のみのときに比べて変調時に電力が伸びていることから、受信側のSメータでは、本来は無変調時に比べて変調時に多めに針が振れるべきなのでは?
という疑問からスタートしました。
FTDX10でAMを送信する場合
- RJX-601で受信すると、マイナス変調に見える
- TS-590SやFTDX101MPで受信すると、ちゃんと無変調時よりも変調時にSが増える
という違いがあったので、無線機の世代によりどう見えるんでしょうね、ということをGeminiに解説してもらいました。
途中から振幅変調をオシロで見ための基本的なことの説明をしてもらった残骸になります。
解説は解説として面白いんですけど、一番下に昭和の無線機で検証してみたところもキモですので、途中が面倒でも最下部はごらんください。
(※ 以下よりGeminiによる技術解説パートになります)
AM受信時におけるSメーター応答メカニズムの変遷
検波回路・AGC抽出機構とSメーター指示特性の相関関係史
アナログスーパーヘテロダイン初期(単体ダイオード検波・受動平滑AGC方式)
検波回路とSメーターの連動メカニズム
最終IF段から整流ダイオード(1N60等)へ分岐し、包絡線整流によって得られたDC電圧(平均振幅電圧)をRC積分回路で平滑化。これを「AGC制御電圧」および「Sメーターの駆動電流源」として共用していました。二乗演算を行わない受動平滑回路のため、側波帯の電力を正しく加算評価できない構造です。
AM受信時の特徴とSメーターの振れ方
- トランス/コレクタ変調波での動作: 変調に伴ってキャリア自体の振幅も上に押し上がる(キャリアバンプする)送信機であれば、ダイオード整流の重い平滑回路を通しても「発声時に針が右へ伸びる(プラス変調)」動作を示しました。
- 【キャリア固定型送信機やFTDX10受信時の「濡れ衣マイナス変調」メカニズム】: キャリア振幅が完全固定された高精度なAM波(完璧に調整された低電力変調や現代のFTDX10数値演算AM)が入ると、整流回路は側波帯の過渡的ピークに過敏反応して余分に深い負のAGC電圧を生成してしまいます。この過剰なAGCがIF段を強く絞り込み、基底キャリア成分(DCレベル)まで一緒に抑圧(キャリアダッキング)。その結果、変調がかかった瞬間に針が左へ落ちるという「濡れ衣のマイナス変調」が受信機内部の回路構造上発生します。
この部分ですが、一番最後の実機での検証をご参照ください。AM専用機などダイオード検波の場合と、SSBとのマルチモード化されたプロダクト検波以降の時代で挙動が分かれたようです。
高機能検波IC熟成期(アクティブIC検波・独立ドライブ方式)
検波回路とSメーターの連動メカニズム
ギルバートセル型マルチプライヤやプロダクト/同期検波ICが定着。ダイオードの順方向電圧(Vf)による不感帯が完全排除され、極小信号から過大入力まで完璧なリニア検波が可能になりました。AGC回路とメーターバッファ(OPアンプ構成)が分離・独立したことで、過剰AGCによるキャリアダッキングが大幅に抑制されました。
AM受信時の特徴とSメーターの振れ方
- 検波ICのリニアリティによる動特性向上: ダイオード特有の不感帯が消え、入力されるAM波の包絡線エネルギーに対して忠実に追従します。
- 【YAESU数値演算型AM波受信時のSメーター表現】: 検波回路の直線性が高くAGCとメーター回路が分離されているため、FTDX10等の変調波を受けてもダッキングを起こしません。無変調時には「キャリア指示位置(例:S7)で針がロック」され、発声すると側波帯の増幅エネルギーを捉えて「S7 ➔ S8.5へと針がキレ味鋭く右に跳ね上がる(正しくプラスに変調する)」という、ダイナミックな振れを示します。
IF DSP導入期(過渡期・デジタル包絡線演算方式)
検波回路とSメーターの連動メカニズム
物理検波回路が消失。中間周波数(IF)信号をA/D変換し、DSP上の数学的アルゴリズム(包絡線検出:$\sqrt{I^2+Q^2}$)によってAM検波を実行します。Sメーターも「物理AGC電圧の平滑値」から脱却し、DSP内部で計算された「受信電力データ」をバーグラフへデジタル描画する方式へ移行しました。
AM受信時の特徴とSメーターの振れ方
- 回路癖の完全排除: 物理平滑回路の時定数やダイオードの不感帯による誤作動(落ち込み)が物理的に起こり得なくなりました。
- 【YAESU数値演算型AM波受信時のSメーター表現】: TS-590SなどのDSP機では、FTDX10の「固定キャリア+高品位側波帯」を受信した際、「無変調キャリアのバー位置が固定され、発声時には側波帯電力の加算に応じて正確に右(上面)へバーグラフが伸張する」という、極めてソリッドで素直な指示になります。
ダイレクトサンプリングSDR時代(真の二乗電力リアルタイム演算期)
検波回路とSメーターの連動メカニズム
アンテナ入力を高速A/D変換。FPGA/DSP回路上で瞬時全電力 $P(t) = I(t)^2 + Q(t)^2$ を二乗演算することで、歴史上初めて「平均電力・PEP(ピーク電力)」を忠実に測定できるようになりました。Sメーターは単なる受信表示器から、測定器と同等の高精度な統合電力可視化装置へ進化しています。
AM受信時の特徴とSメーターの振れ方
- 【YAESU数値演算型AM波受信時のSメーター表現】: FTDX101MP等の最高峰SDR機で受信した場合、過剰AGCによる歪みやダッキングは皆無です。ウォーターフォール上には純粋な両側波帯(USB/LSB)のみが現れ、デジタルSメーターは正調変調時の理論電力増幅値(平均電力+1.76 dB / PEP 4倍)を一切の誤差なくリアルタイムに正しく表示します。
💡 技術解説:「平滑DC電圧」の限界と、昭和の「濡れ衣マイナス変調」
「検波出力を平滑したDC電圧=信号の平均電力を測っている」と思われがちですが、理論的にも歴史的にも、送信機の方式と受信回路の相性によって大きな見かけ上のギャップが生じていました。
- 理論上のAM平均電力: 正調100%変調時、両側波帯(USB/LSB)のエネルギーが加算されるため、送信電力(平均電力)は無変調時の1.5倍(+1.76 dB)に増加します。
- RC平滑回路の限界: アナログ受動平滑回路が得るのは「算術平均電圧($\bar{V}$)」に過ぎず、電力($V^2 / R$)に必要な二乗演算ができません。理論上でも変調時のDC電圧は「1.0倍(変化なし)」止まりです。
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ちゃんとプラスに振れた送信機(コレクタ/プレート変調):
巨大な変調トランス等を用いるコレクタ変調やプレート変調は、変調時にキャリア振幅自体も押し上がる「キャリアバンプ(プラス変調)」を伴っていたため、古い受信機の重い平滑回路を通してもSメーターが誇らしげに右へ振れていました。 -
「濡れ衣」と「実状」が交錯した送信機(スクリーングリッド変調や低電力変調):
真空管のスクリーングリッド変調は、終段真空管で変調をかけるものの数ワット程度の僅かなAF電力で済む画期的な方式でした。しかし、直線性の範囲(ダイナミックレンジ)が狭くRFドライブや動作点の調整が非常にシビアだったため、調整ミスによって「送信機側で本当にキャリアが押し潰されてマイナス変調になっていた」ケースが多発しました。
一方で、完璧に調整されてキャリアが安定した「理想的なAM波」を出していた場合でも、受信機側(RJX-601やTR-9300等)の過剰AGCに引っかかってSメーターが下に落ちてしまい、「正しく変調をかけているのにマイナス変調だと言われる濡れ衣の悲劇」も重なっていました。この「送信機側の調整難易度」と「受信機側の過剰AGC」のダブルパンチこそが、昭和のAM通信におけるマイナス変調論争の技術的背景です。
低電力変調のメカニズムと波形観察における真相
A. 完全に同じくマイナス変調に見えていましたし、方式が「低電力変調(キャリア固定型)」である限り、真空管・半導体・現代のDSP(数値演算型)を問わず旧式受信機ではすべてマイナス変調に見えます。
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真空管低電力変調(制御格子変調・抑止格子変調など)の場合:
完璧に調整した理想波形であっても旧式受信機(RJX-601やTR-9300等)では過剰AGCに引っかかり「見かけ上のマイナス変調(濡れ衣)」になりました。さらに、真空管の動作直線性の範囲が狭くドライブ調整がシビアだったため、調整ミスで実際にキャリアが押し潰されて「本当のマイナス変調(実態)」を引き起こしやすいという二重の側面がありました。 -
デバイスや時代を超えた共通メカニズム:
「低電力変調(Low-Level Modulation)」とは、小さな信号レベルでAM波を作り出しリニアアンプ等で増幅する方式の総称です。真空管の制御格子変調はもちろん、トランジスタ時代の平衡変調器応用、現代のFTDX10のようなFPGA/DSP数値演算型AM波に至るまで、すべて「無変調キャリア振幅が一定で変調時に側波帯だけが乗る」という共通波形を持ちます。
そのため、受動平滑AGCを備えたアナログ旧式受信機で受ける限り、送信機側の素子や時代に関係なく100%「過剰AGCによるキャリア抑圧(見かけ上のマイナス変調)」が発生します。
A. 谷がゼロまで縮むのは、キャリア(搬送波)が消えているからではなく、きれいな変調(100%変調)がかかった瞬間に「キャリア」と「サイドバンド(側波帯)」の波がお互いをピッタリ打ち消し合っている(プラスマイナスゼロになっている)からです。これは低電力変調でもコレクタ変調でも同じです。
「キャリア固定」とは、声を出している間も「無変調のときの太い帯が真ん中にそのまま残り続ける」という意味ではありません。「声を乗せても、土台となる搬送波(キャリア)のパワーそのものは増えも減りもしない」という意味です。
オシロスコープの画面では、無変調時の「太い帯」の幅を基準にして、声を乗せた瞬間に山が上に2倍膨らみ(+100%)、同時に谷が真ん中のゼロまでキュッと縮む(-100%)ことで、きれいな上下対称のひょうたん型になります。
コレクタ変調でも、綺麗に100%変調がかかっていれば谷はゼロまで引き込みます。ただし、コレクタ変調は電源電圧そのものを音声で上下させるので、大声を出したときに「土台のキャリア自体がガツンと増えて、真ん中の帯ごと太くなる(キャリアバンプ)」という現象が起きがちでした。
一方、低電力変調は土台のキャリアパワーがビシッと一定に保たれるため、無変調のときの白帯の幅を基準にして、山と谷だけが綺麗に上下均等へ広がる美しい波形になります。
【検証】八重洲「数値演算型低電力変調」を昭和の無線機で聴き比べてみた
Gemini解説の理屈はそれとして、実際に手持ちの無線機ではどうなっているんだろうということで、(酔っぱらって帰ってきましたが、勢いは大事です。)押し入れから70〜80年代初頭の機種を引っぱり出してきました。
- National RJX-601(50MHz AM/FM トランシーバー)
- TRIO TS-600(50MHz SSB/CW/AM/FM マルチモード機)
- KENWOOD TR-9300(50MHz SSB/CW/AM/FM マルチモード機)
理論上の想定
八重洲のいわゆる「数値演算(等価回路)型低電力変調」は、DBMで生成したDSBにDCキャリアを加算合成する方式です。純AM機の検波回路やAGCの応答特性、あるいはキャリア合成波形のアンバランスなどを考慮すると、ダイオード検波主体の古いAM受信機で受けた場合、変調のピークで平均キャリアレベルが押し下げられ、Sメーターの針が左に落ちる(マイナス変調)ように見えるのではないか……と予想していました。
実際に試してみた結果
FTDX10にアッテネータを接続して送信し、3機種を近くにおいて無変調でS9程度で受信できる状態を作り、無変調から「あーあー」と変調をかけた際のSメーターの振る舞いを観察してみたところ、以下の結果となりました。
- RJX-601: マイナス変調
- TS-600: プラス変調
- TR-9300: プラス変調
受信機によって見事に結果が割れました。
(※特にTS-600が重たいので、画像はTR-9300だけでご勘弁くださいw)
なぜ結果が分かれたのか?(Geminiによる考察)
RJX-601は終段コレクタ変調を前提とした純AM機です。検波段は伝統的なダイオード検波で、IF帯域もAM用に約6kHzと広めに設定されています。
八重洲の低電力変調波を入力すると、キャリアとサイドバンドの位相関係や検波段のダイナミックレンジの影響を受け、変調の瞬間に「平均キャリアが下がった」と検波回路が判断してSメーターがマイナスに振れたと考えられます。
一方、TS-600やTR-9300はSSB/CWの受信能力を備えたマルチモード機です。
SSB/CWモード(プロダクト検波+FAST AGC)でキャリア近傍を受信した場合、変調によって発生した側帯波(サイドバンド)のエネルギーが素直に加算されます。低電力変調の本質である「変調に伴う全体電力の増加」をそのまま捉えたため、Sメーターが元気にプラス方向へ振れたと言えます。
結局のところ、低電力変調の電波(ただし、ちゃんとした低電力変調であることが前提です。)を受信した場合、ダイオード検波以前だとマイナス変調に見えて、プロダクト検波以降は、低電力変調もちゃんとサイドバンド成分が出ているときにはSがそれに応じて増えて見える、というところですかね。








