2023年8月9日水曜日

FT-207です。まずは長い長いマクラ編。

1978年1月に144MHz帯のナロー化とFMを145MHz台に移すバンドプランの完全施行があって、これを機に、144MHzFM機は水晶発振の時代からPLLシンセサイザの多チャンネル時代に移りました。

それまでの40kHzセパレーションに対応したワイドFMの水晶発振トランシーバでは、受信フィルタを16kHz以下の狭帯域のものに変更すること、送信のデビエーションを40kHz幅から16kHz幅に収めることと、FMに割り当てられた145MHz台の水晶に交換しないと出られなくなりました。

この少し前のCQ誌には大々的にFMトランシーバのナロー化改造特集があって、各メーカーの機種別に改造方法が記載されました。免許を取る前の私も、父親からもらった水晶発振12ch機、FT-2Fをナロー化改造して、ほとんどのchの送受信別々の水晶を発注して、145MHz台で送受信できるように備えたものでした。

FT-2Fとは何ぞやというところですが、八重洲が公式に同機のマイナーチェンジモデルであるFT-2FBの取扱説明書を公開しているので、興味のある方はみてみてください。

 

マクラが長いですが、もう少し続きます。

件のFT-207が出る前の年である1978年に、水晶発振6chでハンディトーキーのFT-202が発売されます。このころの144MHzハンディ機は、

〇70年代初頭から続くマランツのSR-C145BN(Nはナロー、水晶発振5ch、ハンディ型)(後から気付いたのですが、このころ既にマランツからはC145BNの後継のC145G(ナロー、水晶発振6ch、ハンディ型)が発売されていたようです。この機種もけっこうな付け焼刃ですね。)を筆頭に、

〇トリオのTR-2200Gのナロー化対応機TR-2200GⅡ(水晶発振12ch、肩掛け型)、

〇アイコムからはIC-502と同じ形のIC-212(ナロー、水晶発振16ch、縦型の肩掛け型)、

〇NECからCQ-P2200N(水晶発振12ch、同じくNはナローの意、肩掛け型)、

〇福山からMULTI Palm2(水晶発振6ch、ハンディ型)

が販売されていました。ですが、どの機種も大混雑の144MHzFMなのに水晶発振で少しのチャンネルですから、関東地方の高いところに登ってCQCQなんてやろうものなら、持ってる周波数全部空いてないなんてことが頻発したと思います。

当時のバンドの混雑状況、しかしPLLシンセサイザにするには価格転嫁が難しい、開発コストもかかる、新機種を出すならナロー化145MHz台移行のバンドプラン完全施行後の早い時期にと各社考えていたのだと思います。

それにしてもFT-202はバンドプラン完全施行後の1978年になった後に出てきていますから、当時CQ誌を眺めていた私でも、業務機を転用して当座を凌いでいるんだろうなと達観して見ていました。広告には中学生が自転車で運用する姿を使ったりで、私らにワクワク感を喚起しようと努力してましたが…ね。

eham.netのFT-202Rレビューを読んでみると、「old brick HTs」と表現していて面白いです。この世代のハンディトーキーは煉瓦くらい大きいですからね。

事実、1978年の初夏、私自身が電話級の講習会に通っていた頃には、トリオからTR-2300が発売、ハンディ機も多チャンネル化の時代に入りました。同じころ福山からはデザインがかわいらしいMULTI Palmsizer2が発売され、145MHz台を20kHzセパレーションでフルカバーで出られるようになり、時代が進んだ感がありました。

そんな中、1979年になって、前年にFT-202で初めてハンディ機市場に入った八重洲が、デジタルディスプレイ付きの144.00-145.99MHzまでフルカバーのFT-207を発売しました。筐体はFT-202と共通のハンディトーキー型ですが、テンキーボードが筐体正面にあり、周波数を直接入力してQSYすることができる、未来を感じる機種です。

その当時、CQ誌の広告ページを舐めるように読んでいた私(こう書くとちょっと気持ち悪い中学生ですねw)は、このテンキーボードは既に発売されていたのCPU-2500(八重洲の最初の144MHzPLL機)のマイクロホンに実装されているテンキーの流用だと一目でわかりましたが、それでも、価格が高くなっても出してみようという実験的要素が伺えたCPU-2500の先進的なところを、低価格を目指すハンディ機に取り入れて出してきたというところも含めて、八重洲は付け焼刃的なFT-202から一気に他メーカーを追い越してきたなと感じたものでした。

<明日に続きます。>

※バンドプランの画像は、1978年春から夏にかけて私が受講した電話級の講習会の教科書から。それまで買いそろえていた144MHz台(144.36から144.96まで)の水晶が軒並み使えなくなるというのはインパクトが大きかったです。たった12chのFT-2Fでしたが、水晶入れ替えでかなりお金がかかりました。

※付け焼刃的な展開で出てきたFT-202の頃の他メーカーの機種は、ハンディ型は水晶発振5-6ch、肩掛け型は12-16chです。自宅で据え置いて使うには不向きのハンディ型は、時代遅れ感満載のチャンネル数の少なさですが、各社PLLシンセサイザ機を出す前の一時しのぎと割り切って少ないチャンネル数で良しとしたのでしょうね。12chの肩掛け型については旧来の機種を引っ張る形で、古さを感じて買う買わないはユーザサイドに任せた展開だったのでしょう。アイコムのIC-212は16chと中途半端ですが、 同社はそれまで144MHzFMのハンディ機(可搬機)が無かったので、IC-502と同じ顔で出してみましたというところなのでしょうけれど、当時これを見た私は、502と同じ顔は面白く感じても、水晶発振かぁ、追加でお金かかるじゃんとあまり刺激を感じませんでした。

※CPU-2500ですが、八重洲のトランシーバの名前である「FT」がついてないんですね。それゆえ実験的な販売だったんだろうなと。後継のFT-227 MEMORIZERには「FT」がついてますからね。 

※ちなみに、FMの145MHz台完全移行の144MHz帯でしたが、関東では1年で1プリフィックス進むくらいの局数の増加と、PLLシンセサイザによる10kHzセパレーション200ch機の発売で、結局バンド中20kHzおきにFMでしゃべるおじさんたちで埋まるという状況でした。でも結果的に20kHzセパレーションとナロー化だけはちゃんと実現できましたね。

※TR-2300の項ではここまで濃厚なマクラは書かなかったんですが、当時TR-2300は私にとっては先進的なあこがれの機種で、手が届かないイメージがありました。我が家にあったFT-101、625DやFT-2Fは身近でしたが、トリオ製品ってあこがれるものの、後年TM-401やTH-45を買うまでどうも縁遠かったんです。それで、TR-2300の項では後々に手に入れたあこがれの無線機ということで、無線機本体の話に終始したんですね。対して、本項については、目の前にあった八重洲のトランシーバを苦心してナロー化したり、その後中途半端な機種(FT-202ですね)が出たのを眺めたりした後で、新たに発売されたFT-207を見た印象が強かったので、こんな書き方になった次第です。

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