【お知らせ】
AT-D168UVのコードプラグを当分の間公開しています。いつまでかは考えていません。以下のURLからダウンロードできます。
自分のために作っているものなので、内容に責任を一切負いませんが、カスタマイズのベースに使うなど、ご参考にどうぞ。

2026年4月21日にファイルの更新を行いました。(4/21、長らく見落として載せていなかった3エリアの1局を追加しました。Zone「VoIP」を「VoIP1」と「VoIP2」に分けました。)

ファイルの説明、更新の概要などやダウンロードは以下のエントリーからです。ファイル更新の概要などはご一読くださいますよう。

「AT-D168UV(その6、コードプラグ)」
https://tr-1300.blogspot.com/2025/09/anytone-at-d168uv4.html


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当blogからのトーグループリストの公開は終了しました。FaceBookの公開グループ、DMR OpenSource Japanの「ファイル」からダウンロードできるようになっています。
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2026年8月11日火曜日

2020年代最新の無線機の低電力変調を受信すると、受信機の時代によりどう見えるのか(少し見やすく改稿)

✍️ 筆者まえがき

こんにちは。また、カッコよいスタイルのついている部分があるエントリーです。少し前に「八重洲流数値演算型マイナス変調」の話を書きましたが、これは

FTDX10などの数値演算型低電力変調はいわゆるマイナス変調ではなく、PEPメータで計測すると搬送波のみのときに比べて変調時に電力が伸びていることから、受信側のSメータでは、本来は無変調時に比べて変調時に多めに針が振れるべきなのでは?

という疑問からスタートしました。

FTDX10でAMを送信する場合

  • RJX-601で受信すると、マイナス変調に見える
  • TS-590SやFTDX101MPで受信すると、ちゃんと無変調時よりも変調時にSが増える

という違いがあったので、無線機の世代によりどう見えるんでしょうね、ということをGeminiに解説してもらいました。

途中から振幅変調をオシロで見ための基本的なことの説明をしてもらった残骸になります。

解説は解説として面白いんですけど、一番下に昭和の無線機で検証してみたところもキモですので、途中が面倒でも最下部はごらんください。

(※ 以下よりGeminiによる技術解説パートになります)


AM受信時におけるSメーター応答メカニズムの変遷

検波回路・AGC抽出機構とSメーター指示特性の相関関係史

1970年代〜1980年代前半

アナログスーパーヘテロダイン初期(単体ダイオード検波・受動平滑AGC方式)

検波回路とSメーターの連動メカニズム

最終IF段から整流ダイオード(1N60等)へ分岐し、包絡線整流によって得られたDC電圧(平均振幅電圧)をRC積分回路で平滑化。これを「AGC制御電圧」および「Sメーターの駆動電流源」として共用していました。二乗演算を行わない受動平滑回路のため、側波帯の電力を正しく加算評価できない構造です。

[IF段信号] ──> [ダイオード整流(Vf不感帯有)] ──> [RC受動平滑(振幅平均DC)] ┬─> [IFゲイン抑制(AGC)] └─> [可動コイル型Sメーター]
代表的な機種例: National RJX-601, TRIO TS-600, TR-9300 など

AM受信時の特徴とSメーターの振れ方

  • トランス/コレクタ変調波での動作: 変調に伴ってキャリア自体の振幅も上に押し上がる(キャリアバンプする)送信機であれば、ダイオード整流の重い平滑回路を通しても「発声時に針が右へ伸びる(プラス変調)」動作を示しました。
  • 【キャリア固定型送信機やFTDX10受信時の「濡れ衣マイナス変調」メカニズム】: キャリア振幅が完全固定された高精度なAM波(完璧に調整された低電力変調や現代のFTDX10数値演算AM)が入ると、整流回路は側波帯の過渡的ピークに過敏反応して余分に深い負のAGC電圧を生成してしまいます。この過剰なAGCがIF段を強く絞り込み、基底キャリア成分(DCレベル)まで一緒に抑圧(キャリアダッキング)。その結果、変調がかかった瞬間に針が左へ落ちるという「濡れ衣のマイナス変調」が受信機内部の回路構造上発生します。
✍️ 筆者注記

この部分ですが、一番最後の実機での検証をご参照ください。AM専用機などダイオード検波の場合と、SSBとのマルチモード化されたプロダクト検波以降の時代で挙動が分かれたようです。

1980年代半ば〜1990年代前半

高機能検波IC熟成期(アクティブIC検波・独立ドライブ方式)

検波回路とSメーターの連動メカニズム

ギルバートセル型マルチプライヤやプロダクト/同期検波ICが定着。ダイオードの順方向電圧(Vf)による不感帯が完全排除され、極小信号から過大入力まで完璧なリニア検波が可能になりました。AGC回路とメーターバッファ(OPアンプ構成)が分離・独立したことで、過剰AGCによるキャリアダッキングが大幅に抑制されました。

[IF段] ──> [高精度検波IC (Vf影響排除/完全リニア)] ┬─> [リニアAGC回路] └─> [OPアンプ型ドライブ] ──> [高応答可動コイル]
代表的な機種例: TRIO / KENWOOD TS-930, TS-940, TS-950S / YAESU FT-1000(初期型)などの最高峰アナログ高級機

AM受信時の特徴とSメーターの振れ方

  • 検波ICのリニアリティによる動特性向上: ダイオード特有の不感帯が消え、入力されるAM波の包絡線エネルギーに対して忠実に追従します。
  • 【YAESU数値演算型AM波受信時のSメーター表現】: 検波回路の直線性が高くAGCとメーター回路が分離されているため、FTDX10等の変調波を受けてもダッキングを起こしません。無変調時には「キャリア指示位置(例:S7)で針がロック」され、発声すると側波帯の増幅エネルギーを捉えて「S7 ➔ S8.5へと針がキレ味鋭く右に跳ね上がる(正しくプラスに変調する)」という、ダイナミックな振れを示します。
1990年代後半〜2000年代

IF DSP導入期(過渡期・デジタル包絡線演算方式)

検波回路とSメーターの連動メカニズム

物理検波回路が消失。中間周波数(IF)信号をA/D変換し、DSP上の数学的アルゴリズム(包絡線検出:$\sqrt{I^2+Q^2}$)によってAM検波を実行します。Sメーターも「物理AGC電圧の平滑値」から脱却し、DSP内部で計算された「受信電力データ」をバーグラフへデジタル描画する方式へ移行しました。

[低IF段] ──> [A/D変換] ──> [DSP(包絡線演算 & ソフトウェアAGC)] └─> [受信電力数値算出] ──> [液晶/バーグラフ描画]
代表的な機種例: KENWOOD TS-590S / TS-870S, Icom IC-756PROシリーズ, YAESU FT-2000 など

AM受信時の特徴とSメーターの振れ方

  • 回路癖の完全排除: 物理平滑回路の時定数やダイオードの不感帯による誤作動(落ち込み)が物理的に起こり得なくなりました。
  • 【YAESU数値演算型AM波受信時のSメーター表現】: TS-590SなどのDSP機では、FTDX10の「固定キャリア+高品位側波帯」を受信した際、「無変調キャリアのバー位置が固定され、発声時には側波帯電力の加算に応じて正確に右(上面)へバーグラフが伸張する」という、極めてソリッドで素直な指示になります。
2010年代〜現在

ダイレクトサンプリングSDR時代(真の二乗電力リアルタイム演算期)

検波回路とSメーターの連動メカニズム

アンテナ入力を高速A/D変換。FPGA/DSP回路上で瞬時全電力 $P(t) = I(t)^2 + Q(t)^2$ を二乗演算することで、歴史上初めて「平均電力・PEP(ピーク電力)」を忠実に測定できるようになりました。Sメーターは単なる受信表示器から、測定器と同等の高精度な統合電力可視化装置へ進化しています。

[アンテナRF] ──> [高速ADC] ──> [FPGA/DSP (IQリアルタイム二乗全電力演算)] └─> [高精細液晶 (真の平均電力 / PEP表示)]
代表的な機種例: YAESU FTDX101MP / FTDX10 / FT-710, Icom IC-7300 / IC-7610 など

AM受信時の特徴とSメーターの振れ方

  • 【YAESU数値演算型AM波受信時のSメーター表現】: FTDX101MP等の最高峰SDR機で受信した場合、過剰AGCによる歪みやダッキングは皆無です。ウォーターフォール上には純粋な両側波帯(USB/LSB)のみが現れ、デジタルSメーターは正調変調時の理論電力増幅値(平均電力+1.76 dB / PEP 4倍)を一切の誤差なくリアルタイムに正しく表示します。

💡 技術解説:「平滑DC電圧」の限界と、昭和の「濡れ衣マイナス変調」

「検波出力を平滑したDC電圧=信号の平均電力を測っている」と思われがちですが、理論的にも歴史的にも、送信機の方式と受信回路の相性によって大きな見かけ上のギャップが生じていました。

  • 理論上のAM平均電力: 正調100%変調時、両側波帯(USB/LSB)のエネルギーが加算されるため、送信電力(平均電力)は無変調時の1.5倍(+1.76 dB)に増加します。
  • RC平滑回路の限界: アナログ受動平滑回路が得るのは「算術平均電圧($\bar{V}$)」に過ぎず、電力($V^2 / R$)に必要な二乗演算ができません。理論上でも変調時のDC電圧は「1.0倍(変化なし)」止まりです。
【当時の送信機による見え方の違いと、スクリーングリッド変調の微妙な立場】
  • ちゃんとプラスに振れた送信機(コレクタ/プレート変調):
    巨大な変調トランス等を用いるコレクタ変調やプレート変調は、変調時にキャリア振幅自体も押し上がる「キャリアバンプ(プラス変調)」を伴っていたため、古い受信機の重い平滑回路を通してもSメーターが誇らしげに右へ振れていました。
  • 「濡れ衣」と「実状」が交錯した送信機(スクリーングリッド変調や低電力変調):
    真空管のスクリーングリッド変調は、終段真空管で変調をかけるものの数ワット程度の僅かなAF電力で済む画期的な方式でした。しかし、直線性の範囲(ダイナミックレンジ)が狭くRFドライブや動作点の調整が非常にシビアだったため、調整ミスによって「送信機側で本当にキャリアが押し潰されてマイナス変調になっていた」ケースが多発しました。
    一方で、完璧に調整されてキャリアが安定した「理想的なAM波」を出していた場合でも、受信機側(RJX-601等)の過剰AGCに引っかかってSメーターが下に落ちてしまい、「正しく変調をかけているのにマイナス変調だと言われる濡れ衣の悲劇」も重なっていました。この「送信機側の調整難易度」と「受信機側の過剰AGC」のダブルパンチこそが、昭和のAM通信におけるマイナス変調論争の技術的背景です。
補足 Q&A

低電力変調のメカニズムと波形観察における真相

Q1. 真空管の低電力変調(制御格子変調など)も、70年代からの受信機ではマイナス変調に見えていた?「低電力変調=マイナス変調に見える」は真空管に限らずですか?

A. 完全に同じくマイナス変調に見えていましたし、方式が「低電力変調(キャリア固定型)」である限り、真空管・半導体・現代のDSP(数値演算型)を問わず旧式受信機ではすべてマイナス変調に見えます。

  • 真空管低電力変調(制御格子変調・抑止格子変調など)の場合:
    完璧に調整した理想波形であっても旧式受信機(RJX-601等)では過剰AGCに引っかかり「見かけ上のマイナス変調(濡れ衣)」になりました。さらに、真空管の動作直線性の範囲が狭くドライブ調整がシビアだったため、調整ミスで実際にキャリアが押し潰されて「本当のマイナス変調(実態)」を引き起こしやすいという二重の側面がありました。
  • デバイスや時代を超えた共通メカニズム:
    「低電力変調(Low-Level Modulation)」とは、小さな信号レベルでAM波を作り出しリニアアンプ等で増幅する方式の総称です。真空管の制御格子変調はもちろん、トランジスタ時代の平衡変調器応用、現代のFTDX10のようなFPGA/DSP数値演算型AM波に至るまで、すべて「無変調キャリア振幅が一定で変調時に側波帯だけが乗る」という共通波形を持ちます。
    そのため、受動平滑AGCを備えたアナログ旧式受信機で受ける限り、送信機側の素子や時代に関係なく100%「過剰AGCによるキャリア抑圧(見かけ上のマイナス変調)」が発生します。

Q2. 低電力変調をオシロスコープで見ると、変調した時に山が上に伸びる一方で、谷間が真ん中の線(ゼロ)までペタッと潰れるのはなぜ?「低電力変調はキャリアは固定されている」はずなのに、谷がゼロまで下がりきるのが直感的に分かりにくいのですが…

A. 谷がゼロまで縮むのは、キャリア(搬送波)が消えているからではなく、きれいな変調(100%変調)がかかった瞬間に「キャリア」と「サイドバンド(側波帯)」の波がお互いをピッタリ打ち消し合っている(プラスマイナスゼロになっている)からです。これは低電力変調でもコレクタ変調でも同じです。

「キャリア固定」の本当の意味:

「キャリア固定」とは、声を出している間も「無変調のときの太い帯が真ん中にそのまま残り続ける」という意味ではありません。「声を乗せても、土台となる搬送波(キャリア)のパワーそのものは増えも減りもしない」という意味です。
オシロスコープの画面では、無変調時の「太い帯」の幅を基準にして、声を乗せた瞬間に山が上に2倍膨らみ(+100%)、同時に谷が真ん中のゼロまでキュッと縮む(-100%)ことで、きれいな上下対称のひょうたん型になります。

昔ながらのコレクタ変調(トランス変調)との違い:

コレクタ変調でも、綺麗に100%変調がかかっていれば谷はゼロまで引き込みます。ただし、コレクタ変調は電源電圧そのものを音声で上下させるので、大声を出したときに「土台のキャリア自体がガツンと増えて、真ん中の帯ごと太くなる(キャリアバンプ)」という現象が起きがちでした。
一方、低電力変調は土台のキャリアパワーがビシッと一定に保たれるため、無変調のときの白帯の幅を基準にして、山と谷だけが綺麗に上下均等へ広がる美しい波形になります。

🎙️ 筆者による実機検証(本題)

【検証】八重洲「数値演算型低電力変調」を昭和の無線機で聴き比べてみた

Gemini解説の理屈はそれとして、実際に手持ちの無線機ではどうなっているんだろうということで、(酔っぱらって帰ってきましたが、勢いは大事です。)押し入れから70〜80年代初頭の機種を引っぱり出してきました。

検証に持ち出した昭和の3機種:
  • National RJX-601(50MHz AM/FM トランシーバー)
  • TRIO TS-600(50MHz SSB/CW/AM/FM マルチモード機)
  • KENWOOD TR-9300(50MHz SSB/CW/AM/FM マルチモード機)

理論上の想定

八重洲のいわゆる「数値演算(等価回路)型低電力変調」は、DBMで生成したDSBにDCキャリアを加算合成する方式です。純AM機の検波回路やAGCの応答特性、あるいはキャリア合成波形のアンバランスなどを考慮すると、ダイオード検波主体の古いAM受信機で受けた場合、変調のピークで平均キャリアレベルが押し下げられ、Sメーターの針が左に落ちる(マイナス変調)ように見えるのではないか……と予想していました。

実際に試してみた結果

FTDX10にアッテネータを接続して送信し、3機種を近くにおいて無変調でS9程度で受信できる状態を作り、無変調から「あーあー」と変調をかけた際のSメーターの振る舞いを観察してみたところ、以下の結果となりました。

  • RJX-601: マイナス変調
  • TS-600: プラス変調
  • TR-9300: プラス変調

受信機によって見事に結果が割れました。

(※特にTS-600が重たいので、画像はTR-9300だけでご勘弁くださいw)

なぜ結果が分かれたのか?(Geminiによる考察)

1. RJX-601(純AM機・ダイオード検波)の挙動

RJX-601は終段コレクタ変調を前提とした純AM機です。検波段は伝統的なダイオード検波で、IF帯域もAM用に約6kHzと広めに設定されています。
八重洲の低電力変調波を入力すると、キャリアとサイドバンドの位相関係や検波段のダイナミックレンジの影響を受け、変調の瞬間に「平均キャリアが下がった」と検波回路が判断してSメーターがマイナスに振れたと考えられます。

2. TS-600 / TR-9300(SSB/CW/AM/FMマルチモード機)の挙動

一方、TS-600やTR-9300はSSB/CWの受信能力を備えたマルチモード機です。
SSB/CWモード(プロダクト検波+FAST AGC)でキャリア近傍を受信した場合、変調によって発生した側帯波(サイドバンド)のエネルギーが素直に加算されます。低電力変調の本質である「変調に伴う全体電力の増加」をそのまま捉えたため、Sメーターが元気にプラス方向へ振れたと言えます。

🎙️ 筆者のまとめ

結局のところ、低電力変調の電波(ただし、ちゃんとした低電力変調であることが前提です。)を受信した場合、ダイオード検波以前だとマイナス変調に見えて、プロダクト検波以降は、低電力変調もちゃんとサイドバンド成分が出ているときにはSがそれに応じて増えて見える、というところですかね。

2026年6月5日金曜日

TR-9300のAMの受信がイマイチという話の続き

以下は、Geminiに「TR-9300のAMモード時に受信しづらいシチュがあるんだけど、なんでかな?」と質問をして、聴きづらかった当時の状況を説明したり、9300の取説pdfを読んでもらったりしているうちに、なんだか壮大なまとめが出来上がってしまいました。せっかくなので貼っておきます。Geminiえらいね、無料のアカウントなのに。
あと、公開してからすぐに気づいたのですが、Geminiが601に専用のAMフィルタがあると思い込んでいたので、回路図を見せて訂正してもらいました。AIなので訂正も早くてすごいですね。
以下、本文です。

往年のアマチュア無線機におけるAM受信特性の技術考察 ~TR-9300、RJX-601、TS-590Sの比較から見える回路設計~

1. はじめに(問題提起)

1980年代前半の50MHz帯マルチモード・コンパクト機であるTR-9300において、ノイズに埋もれた微弱でもないですが、微妙に弱い信号(S3程度)のAMを受信する際、了解度が著しく低下(約75%…75%とは、了解度が5から4または3に落ちた際のパーセンテージということで、大雑把に読んでください。)し、送信側に「変調を深くしてほしい」とリクエストしなければ聞き取りが困難になるシチュエーションがある。

しかし、全く同じ信号を現代のHF/50MHz帯固定機であるTS-590Sで受信すると、同じS3の微妙に弱い信号であるにもかかわらず、驚くほど鮮明に、かつ楽に100%の了解度で復調できる。

この受信性能の差、および変調の深さへの依存度について、各リグの回路図・ブロック図から読み解ける技術的要因(検波方式の物理挙動、フィルター構成、AGCのサンプリング位置)を交えて分析・考察する。


2. 回路構成から見るTR-9300の3つのボトルネック

TR-9300の回路図およびブロック図を確認すると、微弱なAM信号に対して以下の3つのアナログ回路特有の要因が複合的に作用し、受信を過酷にしていたことが分かる。

① ダイオード包絡線検波における「大信号・小信号検波」の境界線

TR-9300のAM検波段(AM DET)には、1本のダイオードとコンデンサ・抵抗で構成されたシンプルな「包絡線検波(エンベロープ検波)」回路が採用されている。

  • 技術的課題(大信号検波と小信号検波): 包絡線検波器が歪みなく直線的に動作するためには、音声成分だけでなく、「キャリア(搬送波)の振幅自体」がダイオードの順方向しきい値電圧(約0.2V~0.6V)を大きく超えている必要がある(大信号検波)。 しかし、S3程度の微弱信号では、IFアンプ通過後であってもキャリア自体の振幅がしきい値の壁を超えられず、ダイオードがスイッチング動作をしない「非線形抵抗領域(2乗特性による小信号検波)」に落ち込んでしまう。
  • 変調度依存の理由: 変調が浅いと、2乗特性領域の減衰と歪みによって音声成分はノイズの中に完全に霧散する。ここで送信側に「変調を深く」してもらうと、全体の振幅のピーク(Vpeak = Vc(1 + m))がしきい値を突き破る時間が生まれる。また、復調出力は変調度 m に比例するため、2乗特性で減衰した音声信号を、人間の耳が認識できるオーディオ出力レベルまで力づくで引き上げる効果が生まれ、了解度が向上する。

② FM用(広帯域)フィルターの共用によるノイズの洪水

TR-9300はSSB/CW/FMをメインとしたマルチモード機であり、AM受信時にはFM用(あるいはそれに準ずる広帯域)のセラミックフィルター(通過帯域幅12kHz~15kHz程度)を通過する経路をとる。

  • 技術的課題: もしSSB用フィルター(約2.4kHz幅)をAM受信に通すと、高音成分(側帯波)が完全にカットされた極端にモコモコした狭い音になり、強入力時でも極めて聴きづらくなる。強入力時に普通にAMらしい広帯域な音で聴こえるということは、広帯域フィルターを通っている証拠である。
  • 微弱信号時の弊害: 信号が強い時は豊かな音質としてプラスに働くが、S3の微弱信号時には、信号の周囲にある広範囲の熱ノイズや外部ノイズをすべて内部に吸い込んでしまう。 これがダイオード検波段に流れ込み、微弱なキャリアと激しく混ざり合って致命的な復調歪みを引き起こす。

③ アナログAGCの取り出し位置とノイズによる感度抑圧

TR-9300のアナログAGC回路は、フィルターを通り抜けてきた高周波エネルギーの「総量」を検知してゲインを制御するが、そのサンプリング位置に構造上の盲点がある。

  • 技術的課題(AGCのサンプリングポイント): TR-9300のようなAM/FM共用ラインでは、15kHz幅の広帯域フィルターを通過した「後」の信号からAGC電圧を検出する。
【TR-9300の一般的なAM/FM共用ライン(概念)】
 IF入力 ──> [広帯域フィルター (15kHz)] ──> [IFアンプ] ─┬─> [AM/FM検波段]
                                                      │
                                                      └─> [AGC/Sメーター検波]
  • 復調への影響: 本来希望するAM信号(占有帯域約6kHz)の外部にある、「左右4.5kHzずつ、計9kHz分の純然たる不要ノイズエネルギー」までがすべてAGCを押し下げるエネルギーとして加算される。 回路はこれを「強い信号」と誤認するため、IFアンプのゲインを自動的に絞ってしまう(ノイズによる感度抑圧現象)。
  • 結果として、ただでさえ微弱な音声成分がさらに極小化されるが、変調を深くしてもらうことでノイズの頭一つ上に音声の「メリハリ(山と谷)」が突きぬけるため、人間の耳が音声をサンプリング(識別)できるようになる。

3. 「RJX-601」との比較

同じく1970年代~80年代初頭のダイオード包絡線検波およびアナログAGCを搭載したリグとして、ナショナルのRJX-601が挙げられる。両機の回路図を詳細に比較すると、フィルター・同調回路の設計思想が明暗を分けていることが浮き彫りになる。

両機の仕様と微弱AM受信時の挙動の違い

  • AM検波方式
    ・TR-9300:ダイオード包絡線検波(微弱入力時は2乗特性領域になり弱い)
    ・RJX-601:ダイオード包絡線検波(微弱入力時は2乗特性領域になり弱い)
  • AGC回路
    ・TR-9300:アナログAGC(広帯域ノイズに引っぱられる)
    ・RJX-601:アナログAGC(絞られたノイズのみに引っぱられる)
  • AM選択度(IFフィルタおよび同調回路構成)
    ・TR-9300:FM用(広帯域)を共用(12k~15kHz)。その帯域内の全ノイズでAGCと検波が動作。
    ・RJX-601:セラミックフィルターはないが、IC(AN210)の後にAM専用の独立したIF増幅回路(TR6:2SC829)とAM専用に狭く調整された複同調IFT(中間周波トランス)群を配置。
  • 微弱AMの受信挙動
    ・TR-9300:広範囲のノイズを吸い込み、AGCの抑圧も重なり了解度が著しく悪化。
    ・RJX-601:AM専用ラインのIFT群によって帯域外のノイズが適度に遮断されているため、感度抑圧が少なく問題なく聴ける。

RJX-601はAM/FM機として設計されており、AM時には帯域が適度に絞られたAM専用のIF増幅・同調経路へダイオードスイッチ等で完全に切り替わる。そのため、ダイオード検波の物理的限界は共通しているものの、「入り口およびAGC検出の手前で余計なノイズを遮断できている」ため、微弱信号でもTR-9300ほどの極端な感度抑圧や了解度低下を起こしにくい。

TR-9300はコンパクトマルチモード機ゆえの「AMフィルター・IFラインのFM共用(割り切り)」という思想が、微弱信号運用時の致命的なボトルネックとなっていたことが証明できる。


4. 現代機(TS-590S)による解決と復調技術の進化

これらアナログ回路のトリプルパンチ(ダイオードの不感帯・広帯域ノイズの混入・AGCの誤動作)を、現代のIF DSP機(TS-590Sなど)はテクノロジーの力で完全にクリアにしている。

  1. デジタルIFフィルターによるノイズ遮断:
    DSP処理により、AMモードであっても帯域幅を3kHz~4kHz等にスパッと急峻に狭めることができる。TR-9300が吸い込んでいた「余計な周囲のノイズ」を入り口で90%以上カットするため、最初からS/N比(信号対ノイズ比)が圧倒的に良い。
  2. DSPによる同期検波(Synchronous Detection):
    現代機がAMを鮮明に復調できる最大の理由は、デジタル処理による同期検波(プロダクト検波の応用)の恩恵である。微弱なAM信号から、DSP内部の数値制御発振器(NCO)やPLLを用いて、ノイズに埋もれたキャリア成分だけを完全に同相同期した「純粋なローカル信号」として内部生成する。これを受信信号と掛け合わせて復調するため、ダイオードのようなしきい値(VF)の概念が完全に存在しない。 キャリアがどれだけ微弱になっても、歪みなく側帯波(音声)を取り出せるため、浅い変調度であっても100%了解できる。
  3. デジタルAGCによる最適化:
    デジタルノイズリダクション(NR)等で帯域外・帯域内のノイズを徹底的に排除した「純粋な信号成分」に対して滑らかにAGCを適用するため、ノイズによる感度抑圧現象が起きず、ノイズを抑えたまま微弱信号を最大感度で増幅する。

5. 結論

TR-9300での運用において、ノイズに埋もれた微弱信号に対して「もっと変調深くして」とリクエストしたのは、受信機側(アナログ検波回路の直線性や広帯域フィルタ)の技術的な限界を、送信側の電力配分(キャリアに対する側帯波エネルギーの増強)によってカバーするという、アナログ運用における極めて合理的かつ有効な対処方法であった。

現代のDSP機(TS-590Sなど)は、これらの問題をフィルターの帯域制限とデジタル同期検波によって機械側で完全にクリアしてしまうため、変調度に関わらずクリアに受信ができる。

当時の設計者は、「50MHz帯におけるAMはすでにマイナーモードであり、FM/SSBの性能とコンパクト化(コスト)を最優先にする」という思想のもと、AMフィルターのFM共用という割り切りを行った。強入力時には良好に機能する広帯域フィルターが、微弱信号運用時にはAGCの抑圧と検波効率の悪化を招くという「アナログマルチモード機特有の割り切り回路の挙動」を理解する上で、今回の2機種(およびRJX-601)の比較は、無線機の進化史における非常に分かりやすい一例である。

2025年6月25日水曜日

そして風向きは再びTS-590無印に

変なタイトルですが、まずは経緯を。

TR-9300みたいな古くて小さいトランシーバは好物の一つで、これで50のAMに出てやろうといろいろとやっていたのですが、AMでのQSOの際に、相手局の変調が浅くて、信号強度はあるのに了解度が低くて、低電力変調ではない局に対して「変調を深くして欲しい」とお願いすることがありました。

先週の日曜日に、友人に50のAMでテストさせてよと電波を出してもらって聴いていたのですが、ノイズが少なく状況は良いはずなのに、入感する信号の強さの割りには了解度が低く感じます。相手局はTS-590のGタイプにMC-90だったのですが、MC-90なのでやさしい音だからスピーチプロセッサを入れて固い音にしたら了解度が上がるかもと伝えたところ、状況は変わらず。ならばということで、ゲインはあるけど音の悪いMC-43Sで喋ってもらっても了解度があがりません。言っていることの7割くらいを理解できる了解度でしょうか。信号はSメーター3つでノイズがほぼ無しの状況なので、もっと了解度が高くても良いはずです。 

ひょっとしたらこちらのせいなのかなと、試しにこちらもTS-590無印にしてみたところ、ばっちり聴こえます。これまでの霞がかかったような変調とは違って、MC-43Sの音の悪さまでわかるようになりました。※両機ともにSP-70を繋いでそちらで聴いています。

590にした途端に良く聴こえて、今まで何だったのと唖然とするわたくし 

9300では他のモードではとくに了解度が低いという印象はなく、AMのみの話です。なんでしょうね。受信する帯域の広さに問題?広すぎると了解度が低い場合はあります。おそらくですが9300は定格の6kHz幅で聴いているんだと思います。590のAM時は、少しだけ狭くして4-5kHz幅で聴いているので、その差なのかもしれません…こう書いていると冷静に分析できますね。程よく狭いから了解度があがったのか、だったら納得ですが、ちょっと気が抜けました。

9300から590に受信機を変えてみる実験に付き合ってくれた友人に、「9300で不自由を楽しむところはあるけど、590にした途端になんでこんなに良く聴こえるのよ」と言ったところ、 「817で同じような経験をしてました。わかります」と。やっぱりそうなんですね。理屈どおりなんでしょうけれど、小さいトランシーバを使うのは不便でも楽しいんだけど、この楽しさは快適とは違う方向なんですよ。

590にしたら聴こえたということに衝撃を受けて、9300のAMモードの追求は中止です。だって聴こえないんじゃしょうがないですから。送信以前の問題ですからね。9300は外に持ち出すことを踏まえて、AM時のキャリアを少し増やして、変調時にキャリアが減らない程度の出力に増力方向で再調整することにします。

で、TS-590無印を再び出してきたので触り始めたのですよ。AMで送信する場合にどのマイクを繋ごうかと考えます。

〇MC-90:これがベストなのはわかりきっている話。ただ、今はIC-9700に繋がっていて、いちいち590に繋ぎなおすのは面倒です。できれば違うマイクに。

〇IC-SM2(ノーマル):9300のAM送信で活躍が始まったSM2ノーマルですが、590で使おうとすると回り込みが起きました。コンデンサマイクってたまにこうなるんですよね。なのでお蔵入りに。

〇アツデンDX-344:9300ではトークパワーが見込めずお蔵入りになっていたところを出してきました。ちょっと繋いでみたところ、特に不具合はなく、使えそうです。ダイナミックマイクのアンプ入りだからでしょうか。 

画像はSSBになってますね。ちゃんとAMでテストしています。
 

そこで、お蔵入りだったアツデンDX-344を持ち出してきました。これでスピーチプロセッサを入れて使ってみたらどうかなということで、ほぼ59-59でQSOできるOM局が出ていたのでテストに付き合ってもらいました。マイク(スポンジのカバー)に対しては0-5cm距離ではきはきとはっきり喋ります。この手のテストって、だいたい熱が乗ってくるとゼロ距離になります。

〇DX-344:MC-90と比べる前は特に印象は無しで、普通にこういう音の人は多いということ。MC-90との比較では、プロセッサONのとき、MC-90と比べると音が暴れているというか、荒っぽい音。 OFFのとき、ONのときとあまり印象が変わらない

〇MC-90:プロセッサONでもOFFでも、音の輪郭がはっきりしている。声の線は細く感じる。プロセッサONでも歪みを感じるところまではいかない。ゲインが低いせいか。

というコメントと考察でした。MC-90との比較なのでDX-344には不利だったかな。あと、TS-590無印では初めて経験したんですが、DX-344でプロセッサ無しではっきり喋ると、送信信号に声が乗るまで少し時間がかかりました。頭切れみたいな感じです。送信できているので頭が切れているわけではないのですが、音声が乗るまで時間差を感じます。これ、ALCが効いているんですね。スピーチプロセッサを入れるとそれはありません。 DX-344はプロセッサONで、自分の信号が弱くて相手にとっての了解度を上げたいときに使う用途になりそうだな。

MC-90を使ってみると、やっぱりどうしてもこっちを使いたくなります。IC-9700と切り換えができるようにして、もう少しスピーチプロセッサを深くかけられるように設定を見つけてみるのも面白そうです。週末が楽しみになってきました。 

 
※TS-590無印のAM時の設定値は、パワーは25W、キャリアは50、スピーチプロセッサのレベルはin/outともに50。スピーチプロセッサを入れないときのマイクゲインは70-80。送信イコサイザは私の声質を踏まえてHb2。
パワー25Wにしておいて、キャリア設定を50から設定値を減らしても、通過型電力計の振れは減らないのは不思議です。
あと、通過型パワー計と安定化電源の電流計は変調をかけるとマイナス方向に振れます(パワー計は数ワットくらい、電流計は針1本分くらい)が、私の信号を受信してもらっている相手方では、変調時にSメーターが変調に応じてさらに振れる(DX-344)か動かない(MC-90)そうです。いわゆるマイナス変調にはなっていないということで安堵。

2025年6月4日水曜日

TR-9300でAMを送信する(続)

何年ぶりのTR-9300でしょう TR-9300でAMを送信する の続きです。

左から、DX-344、元IC-SM2、ノーマルIC-SM2、MC-90


ちょっと基本方針を確認します。

目的はTS-600やTR-9300でのAMの送信で、きれいな音をお届けするのではなく、多少歪んでも、スプラッタをまき散らさない程度の歪で、私の電波が弱かったり、ノイズに埋もれそうになっているときにある程度の了解度をキープすることです。カツミのマイクコンプレッサを使っても良いのですが、少しでもゲインボリュームを開けると歪が大きいので、これは使わずに、できれば無線機本体のマイクゲインの設定とマイクやマイクアンプでなんとかしたい、というものです。

本来であれば、この手のマイク選びではMC-90が候補として筆頭にあがりますが、TS-600にしろ、TR-9300にしろ、骨とう品になりつつある筐体の昔の狭いクリスタルフィルタにマイクアンプ段の組み合わせなので、MC-90を付けても期待したような鮮明な、解像度の高い音にはならないのではと思っています。また、10Wの無線機ですから、AMの場合にTS-590S無印のようにキャリア25W+内蔵スピーチプロセッサを入れて送信できるわけではないので、まずは相手に届かせるというところから考えないと、先方には了解度の低いおとなしい音になってしまいます。

うちのMC-90には台座にエレキットのマイクアンプを入れています。入れるマイクアンプは、もちろん自作の設計の一石程度のアンプでもOKです。これは主にTS-590のFMでの運用を意図して入れました。以前はマイクアンプ用に006Pを内蔵させていたのですが、最近のIC-9700のFM音質迷走の過程で8ピンマイクコネクタ(ケンウッドなら5番)から電源を取るようにしてしまったので、マイクアンプを使いたい場合には4ピンや6ピンの無線機からは電源が取れません。TR-9300は、コンデンサマイクを使えるように、余っているマイク5番ピンに6-7V程度が出て来るように中を配線したので、8ピンジャックを経由して6ピンプラグに変換すれば使えはするんですが。…あれ、9300でMC-90使えるじゃん。

えー、気を取り直して。主題はAMなんです。AMの送信についてつらつら考えてきましたけど、でもまずMC-90にマイクアンプを入れたAMの音を聴いてみたいな。 

で、聴いてみました。TR-9300で送信して、これをTS-590S無印でヘッドフォンを使って聴く方法です。590は同じ無線機机の近くに置いてあるんですが、少し離れているのでせいぜいメータ9つくらいで受信することになり、ヘッドフォンで聴けばハウリングも無くちょうどよさげです。

〇MC-90の音は素直できれいです。最初は台座のマイクアンプ無しでしゃべってみましたが、それだとおとなしくきれいなMC-90らしい音なのですが、やはり物足りません。マイクアンプを入れてみると、マイクのエレメントにゼロ距離でしゃべれば、入力過大気味ゆえの歪が少し出ます。でもこの歪の加減ですが、音の解像度が下がらないのはさすがで、これ使いたいなあと思わせます。AMのときにはもう少し歪ませたいですが、これ以上歪ませないで使いたい気分になります。例えると、MC-90を繋いだTS-950SDXでSSBで送信するときにスピーチプロセッサを軽く入れて少し歪ませたような音みたいな感じです。今回MC-90はIC-9700に繋ぎっぱなしなので、9300での使用は我慢することにします。やっぱりMC-90は良いですねえ。ケンウッドの無線機だと良い音が出るなあと感心します。

〇次に古いアツデンのDX-344を持ち出してきました。これは単一指向性ダイナミックマイクのアンプ入りです。経年劣化でゲインが少なく感じますが、程よい大きさに設定してしゃべってみると、MC-90よりおとなしい音でした。ちょっと物足りないかな。

〇さらに、IC-SM2のECMを取り外し、これを科学教材社の66円のものに変更してある、少し前までTM-833で常用していたマイクを使います。見てくれはIC-SM2なので、ここでは元IC-SM2と呼称します。SSBやFMでは想定どおりのきれいなコンデンサマイクっぽい音です。でも、このマイクはマイクアンプを取り去っているので、AMでもう少し入力を大きくして歪ませたいというのには少し足りません。 (※)科学教材社の66円ECMはマイクのホット、コールド、+電圧の3端子仕様)です。元SM2の台座を開けて、マイクコネクタからの配線を、マイクのホット、コールド、電圧、PTT、PTTのグランドにして、台座とフレキシブルパイプの連絡もECMの3端子化に伴って配線をやりなおしています。インピーダンスマッチングなどは全く考えていませんが、833やTR-50ではそれなりに良い音で使えています。

〇最後に真打、ここで再び入手したノーマルのIC-SM2です。マイクコネクタのピンアサインをケンウッド仕様に変更しただけのオリジナルです。元々のECMもそのまま、アンプもそのまま台座に入っています。

実は、IC-SM2って長年、それこそIC-502で開局した頃から音が悪いと思い込んでいました。IC-502や、202でも良いのですが、これで送信するIC-SM2の音を聴いたことのある人がどれくらい残っているかわかりませんが、 狭い音がしていた記憶がありませんか。そんな印象をそれこそ半世紀近く持ち続けていたんですが、先日、IC-9700にSM2と同じ仕様のIC-SM5を繋いで出てきた友人の声を聴いて、あれ?そんなに悪くないぞ??と思い直すに至りました。そっか、音が悪かったのは主に502のほうに原因があったんだと気づいたのです。それでも、このときに最初に配線だけをケンウッドにして試したときには、良い音だとは思わなかったんだよなあ。502のときの先入観があったんですかね。

今回またIC-SM2を入手し、ケンウッド配線にして使ってみたんですけど、AMの場合、台座の中のアンプのボリュームを軽く開けた状態で程よい歪を伴った声が聴こえます。もっとボリュームを開けるとすぐに下品方向に変わりますが、マイクアンプを軽く使うくらいならOKでしょう。マイクから口を離せばさらに下品さは軽減できます。SSBやFMでも普通に使える音です。MC-90のようにきれいな解像度の高い音質とは違いますが、そうですね、アドニスのコンプレッションマイクのゲインがある音や、最近のアイコムのSM30などの音がイメージに近いでしょうか。アドニスやSM30も軽く使えば同じなんでしょうね。上品ではありませんが、全体的に圧が出るような感じの音です。また、カツミのマイクコンプレッサを無線機とマイクの間に繋ぐよりもコンパクトで良いです。 

というわけで、送信音が貧弱な昔の無線機にトークパワーが欲しいときに使えるマイクとしてノーマルIC-SM2をしばらく使ってみようかと思います。TS-600では別に電源を引かないと使えないので、9300でのアプローチ悪あがきですね。アスタティックのロードデビルの高音域強調とは違う方向の音質ですが、私の電波の弱いときに了解度維持の助けになるでしょうか。 乞うご期待。

これを書きながら、科学教材社の2端子タイプのECM(53円!)を見つけてしまったので、これをノーマルIC-SM2に付けてみたいなと思い始めてしまった…

2025年6月2日月曜日

TR-9300でAMを送信する

何年ぶりのTR-9300でしょう の続きです。

TS-600の修理と調整をしてEsシーズンに入ったのは良かったのですが、新たな不具合が。送信中にAFが動き続けていて、自分のしゃべる声がスピーカーから聴こえるようになっちゃいました。体の良いモニタ機能と考えるのも良いのですが、しばし600はお休み。

TS-590無印でも良いのですが、どうも新しい無線機では楽しくないので、TR-9300の出番になります。この9300は、マイクのエレメントを科学教材社の66円のECMに変更してあります。インピーダンスマッチングとかは全く考えずに、マイク配線に直結して、別途電源を引いているだけなのですが、純正のダイナミックマイクMC-40S(MC-43Sと同じ)の尖った音とは違って、マイルドで深い変調がかかっているようで気に入っています。

とはいえ、AMで送信することを考えると、もう少し考える必要があるかなとあれこれ始めました。まず、AM時の出力ですが、仕様では3Wとあります。この個体を実測してみると4Wを指します。そして、変調をかけてみるとRFメーターはしゃべりの大きさに応じて振れるのですが、パワー計や電流計をみると変調がかかるごとに数値が下がります。いわゆるマイナス変調ってやつです。もう少しキャリアを減らして、変調がかかるとそれに応じてパワーが出るようにしたいところです。 

上側の蓋を開けて、奥側のドライブユニットを触ってみます。こちら(とてもありがたい) によれば、AMのキャリア調整はVR7、マイクゲイン調整はVR6です。


うちの個体では、変調をかけても電流が下がらない設定は、

〇TR-9300単体で使う場合 キャリア2W、変調をかけて2.5Wくらいか。せいぜいキャリア2.5Wの変調時3Wくらいまで。M57735でこんな感じですから、RJX-601の2SC1306で3Wはやりすぎですね。 

〇HL-66Vを繋ぐ場合 キャリア0.5W、変調時に1.5Wまでに留めると電流は下がらず、この場合66Vの出力はキャリア10Wで変調時15W

でした。 低電力変調だとこんな感じなんでしょうかね。キャリア調整と合わせてマイクゲイン調整をしました。もうちょっと深くしたいとまわしていたら、開く方向に回し切った状態になっています。歪んでいないのでまあ良いでしょう。

いつもリニアの電源を入れっぱなしということでもないので、キャリアを2.5Wくらいにしておきます。この状態だとHL-66Vを通すとキャリア30Wになりますが、しゃべると電流が減って、いわゆるマイナス変調になります。でも仕方ないということにします。

この状態でS7つくらいで入感している局を呼んでみたのですが、クリアだというレポートをもらいました。 本当は友人と長時間シビアにあーでもないこーでもないと調整したいところですが、50のAMが強くもなく弱くもない感じで程よく届く友人がいないので、機会に恵まれません。至近距離の友人にATTとRFゲインを絞って聴いてもらうのも良いんですが、程よく弱いところをノイズ交じりで聴いて欲しいんですよね。難しいです。

あとは、もう少しゲインが高いマイクを使ってみたいと思っています。カツミのマイクコンプレッサーを出してくるのも良いのですが、コンプレッションのゲインを上げると簡単に歪むし、かといってゲインを下げると音が出なくなったりと難しいです。これを使うと簡単に実現できるハイパワー市民ラジオの音は、近くでモニタするとひどいものですが、あれ、実際に遠いところの局が何を言っているのかはよくわかるので、受信状況が悪いときには効果があるんだよなあと関心します。もちろん彼らは出力も大きいんでしょうけれど。エコーも効果的ですよね。アマチュアバンドでやると下品になるので考えものではあります。でもたまにエコーを利かせている人っていますよね。

「マイナス変調」って実践的にはどの程度OKなんでしょう。変調をかけるごとに盛大に電流が下がり、受信側のSメーターもパワーが食われるがごとく下がるという状況があるにしても、了解度が下がらない信号であれば、カッコは悪いですがアリなのかなとも思っています。

送信側では変調時に電流が下がって「マイナス変調だな」と思っていても、受信側ではちゃんと変調に応じてSメーターが数値の大きいほうに振れている場合もあるでしょう。これも結局、実際に受信してもらわないとわからないんだよなあ。 

2025年4月2日水曜日

FT-690mk2とTR-9300のモード変更時の現在周波数の違い

690mk2は純正リニアをつけて、9300はそのまま車に乗せてオンエア可能ということで、両機を比較したことがある方はいらっしゃると思います。  そんなライバルの両機なのですが、

FT-690mk2の項で触れるのを忘れて時間が経ってしまった内容で、

FT-690mk2は、モードボタンでUSB→LSB→CW→FM(変更は一方向)にした後、再びUSBにすると、モードが変わるごとにモード毎のステップの切りの良い00.0kHzに桁合わせが行われるので、SSBのQSO中に誤ってモード変更をするとゼロインしていた元の周波数に戻れません。

例えば50.215.5USBでQSOしている最中にモードボタンを押すと、LSB、CWの順にモードが変わります。モードが変わることについては、遡ることはできません。Fボタンと同時押しで戻れるなんてことができれば良いのですが、Fボタン+モードではNBのオンオフの切り替えになります。問題はFMモードを通過すると、FMモードの最小可変周波数は2.5kHzなので、その単位で桁合わせされてしまいます。50.215.0になるのか、50.217.5になるのかは覚えていないのですが、どちらかに寄せられてしまい、再びUSBに戻っても周波数はそのままで元の周波数ではないため、相手が行方不明(これ、相手から見て、私のほうが勝手に行方不明になっているだけですね)になります。FT-690mk2取扱説明書にはこの挙動のことまでは書いてありません。

この挙動、初めてQSO中にモードボタンを押して(押すなよw)経験したことで、びっくりしたものでした。

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TR-9300は、モード毎に周波数をモード毎の最小端数を覚えているので、ロータリースイッチでパチンとUSBからFMに行ってまたUSBに戻っても、元の周波数に戻れます。
USB/CWだと50.215.5のとき、AMにすると50.215(.0)、FMにすると50.21(0.0)になります。そのままメインダイヤルを触らずに再びUSBにすると50.215.5に戻れます。 AMにしたときに50.216にすると、USBに戻ったときは50.216.5になります。FMのときに50.22にすると、USBには50.220.5で戻ります。 モード毎の最小端数を覚えている仕様です。 

その程度の「覚えている」内容ですが、モードを切り替えて戻ってきたとき(イレギュラーな操作ですけど)に行方不明にならないように、そのモードの最小値を覚えているようです。
USBで受信中に他のモードに切り替えて戻すなんて変なことを、どれだけの人かやるかわかりませんが、私はやる方の人でw、そんなイレギュラーな操作のフールプルーフを念頭に置いたロジックを考えた設計者はすごいと思います。これもTR-9300取扱説明書には書かれてはいません。

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このあたりの細かい話ですが、21世紀に入ってから中古を安価で入手して弄りまくって理解した操作ですけど、発売当時の新製品のときに、雑誌記事にそのあたりまでしっかり書いてあって、それを読む機会があれば良いんですけどね。あとは販売店や人柱のローカルから弄らせてもらって気付くしかないんだよなあ。私はこういうのは調べずに買う口だったりするので、望まない挙動に直面して真っ青という可能性は高かったと思います。

いや、不必要なボタンはQSO中に押すもんじゃないというのはごもっともですね。

※例示の周波数を修正しました。

2025年3月28日金曜日

何年ぶりのTR-9300でしょう

久しぶりにTR-9300を触っています。

50MHzで全てのモードに出られて、周波数が読めて、それなりにコンパクトなのは良いですね。ハンディ機ではないので肩から下げて運用というのには無理がありますが、出先で自動車の中から簡易に運用ができるのは良いです。


トリオでは、最初のPLLオールモード機としてTS-770が1979年に出ています。それ以前にあったアイコムのPLL機のIC-710、221、同じ50MHzではIC-551がありましたが、それらはSSB時には100Hzステップでした。それらとは違い、TS-770はSSB時に20Hzステップでチューニングが取れるので、ほぼアナログVFOと同じ感覚でゼロインができました。同じようにしてくれればよかったのですが、コストダウンでしょうか、モービル運用時はこれくらいで良いだろうという割り切りでしょうか、TR-9000シリーズは100Hzステップと簡略化されてしまっているので、SSBでは相手にちゃんとゼロインすることができません。 そのまたすぐ後に八重洲から出てきたTR-9000シリーズと同じコンセプトのFT-280/680/780シリーズは10Hzステップだったので、TR-9000シリーズは中途半端な感じがしたものでした。

これまでTR-9000シリーズは

○TR-9000G:20年近く前、無線機の数を減らした頃に144を聴いてみたくなって入手、しかし、スルーホール基板の劣化による不具合で実用にはならず。9000Gは何個体か試しましたが、直してもスルーホール基板の劣化でダメになります。

○TR-9500:430のSSBに出てみようと昨年入手。経年でけっこうQRHがあったり、周波数を校正するにも手間がかかりそうでこれはダメだなあと手放す。その後TR-851Dを再び手に入れる。だったら最初から851にすべきですねw

○TR-9300:これも20年近く前に、車で使えそうな50のオールモード機が欲しくなって入手。旅行に一度持ち出した後だったか、役目を終えた感もあり、ローカルに買ってもらった記憶が。

といった感じで、手に入れたものの手放しています。特に9300の場合はSSBの選局のしにくさと100Hzステップがネックでした。

去年、webでTR-9300のRITを送信時も有効にする記事(※)を見つけ、RITのVXO化ができればSSBでもゼロインできるよなあ、いいなあと触発を受けて、適当な個体を入手、マネをしてみたのが我が家の9300です。

(※)「TR-9300 RIT改造FINEチューニング化」などのキーで検索してみてください。ありがたいご教示にたどり着けると思います。

無事、送信時にもRITが有効になって、送信周波数も動かせるようになっています。SSB時の選局のしにくさは仕様なので解決できませんが、そのあたりは無線機に合わせるということで楽しんでます。

この個体を持って私の開局から2年目3年目あたりにタイムリープできれば、オールモードに出られるし、SSBでゼロインできるし、周波数も読めるので、夜な夜なラグチューにばっちりだなって思います。筐体も固定機とは違ってコンパクトだし、勉強机の近くに置くのも良さそうです

当時、IC-502で読めないダイヤルを頼りに同級生と待ち合わせるにしても、みんな502で読めないダイヤルなので、こちらがちゃんとしたアナログの固定機で待ち合わせ周波数どんぴしゃを聴いているだけでは気づけなかったりします。そんなとき、9300のDSボタンを押してワッチすれば10kHz幅でスキャンできるし、さらにノイズブランカを入れておけば強い信号でガサゴソいうのでさらに分かりやすいです。と、書きつつも、TS-600のノイズブランカも近隣周波数の強い信号でガサゴソ賑やかになるので、ノイズブランカでワッチなら600の方が得意?ですねw FT-620、620Bや625はこの辺りどうだったんだろう。9300の優位はタイムリープしないと証明できませんね。

 

こちらの動画は先日FK4(ニューカレドニアはFK「8」だけじゃないんですね)が聴こえていたので動画をば。ノイズがけっこうあるので、高い音で聴きやすく微調整して受信中。これだけのことなら無改造のRITでできますね。

あと、うちのTR-9300は、MC-43Sのダイナミックマイクエレメントをエレクトレットコンデンサマイクに変更して使っています。MC-43Sはゲインがあって元気でいいんですが、音が悪いので、少しでもマトモな音にということで。9000シリーズの6ピンのマイク配線は+8Vが来ていないので、使っていない5番ピンに適当なところから取って電源を入れています。

9000シリーズ付属の6ピンマイクMC-40Sの場合、マイクコネクタとマイク本体の間のケーブルが必要最低限の(マイクホット、PTT、UP、DWN、アース)の5本しか入っていないので、科学教材社ECMのように3端子のもの使う場合には、電源用ケーブルをカールケーブルに沿わせて別配線するしかありません。(※UPだかDOWNから電源を取る方法があるとのことです(未検証)。)マイクのホットと電圧が重畳される前提の2端子のECMユニットを使うなら、コネクタ側でマイクのホットの電源を重畳する方法は考えられますね。

もし、ジャンク箱の中に8ピンのMC-43Sが転がっていれば、マイクの筐体を開いてよくみるとなぜか1本余っている配線があるので、その配線を電源用として使えば、音が悪いので使われずに転がっているMC-43Sを活用できます。 あとはコネクタを6ピンに配線するだけ。使う配線も6本なので問題ありません。MC-43Sの配線を余らせているってことは、ケンウッドはMC-43Sの筐体でコンデンサマイク仕様を出す気があったのでしょうか。