2024年7月3日水曜日

令和6年に再び触るFT-817NDについて

FT-817考 に「なんとも締まりのない話になりましたが、マルチモード、マルチバンドで電池で出られる存在というのは貴重です。そのうち(再び)買っておくべきでしょうか。」と書いて締めていましたが、何年ぶりでしょうか、我が家にFT-817ND(002KN453:新スプ適合)がやってきました。


 

Action☆HandyシリーズやFT-690mk2を触っていると、やはり現代的な性能が欲しくなってきます。連続的に可変できるVFO、HFから430まで自在に移ることができるバンド・モードが実装されているのは魅力的です。

817は初代の発売が2000年、途中で「ND」が付いてニッケル水素充電池が標準装備、さらに新スプリアス規制に適合し、後継のFT-818NDに道を譲り、2023年でしたっけ、ついに818も販売が終了しています。そのせいか、今は中古の817/818の値段がすごいことになっています。私が再び入手した個体は、外観の見栄えや箱入りやフルオリジナルに拘らなかったので、それでも比較的安価で済みました。

対抗馬として考えられたのはIC-705です。大型ディスプレイにHF-430までオールバンド・オールモードで、IFもデジタル化されていて、送信音も吊るしのままで聴きやすい良い音が出ます。ですが、まだそこまでの機種を触るには若干の抵抗があるので、レガシーな817をもう一度触ってみることにしました。

スイッチを入れて関心したのはSSBの受信音が聴きやすいことです。初期のPLLの無線機、FT-690mk2やTR-9300もそうでしたが、それらの世代の無線機は、アナログIFなのにもかかわらず、目的信号のノイズからの浮き上がり具合がいまひとつで、それ以前の完全アナログ機に比べると聴きづらく感じていました。いや、アナログ機でもTR-1300やIC-502は聴きやすいというほどの無線機ではなかったですが、それらに比べても一段劣ると感じていました。

【7/5追記】初期のPLL機でもTR-851のSSBは悪くないです。大昔、FT-100Dと比較してみて、FT-100Dのなんとも言えない聴きにくさに比べて、曇りが取れたような音に感じました。TR-851Dは今も愛用中です。

しかし、FT-817はそろそろPLLの処理が上手になってきた頃だったからでしょうか、デジタルPLL・アナログIF・DSP処理はやってもせいぜいAFくらいのFT-897やFT-920あたりと同様に、混雑をかきわけて使うといった極限的な状況ではなく、普通のQSOをするには十分な聴きやすさがあります。

※デジタルIFのTS-590などの評価については このあたり をごらんいただければ

FT-817には、アサップシステムのダイヤル電動ファンや、海外製品のフレームラックなどのサードパーティ製品がまだ売られていて、好みで買いそろえることができます。

  • アサップシステムの電動ファンですが、元々付いているNidecの低消費電力のファンはうるさいので、私はOMEGA TYPHOONの究極静音タイプに交換しています。また、ファンを回すシチュエーションを考えると、電池駆動のときには回さないでしょうから、この電動ファンのユニットについているスイッチはファンを回すだけのスイッチということにして、このユニット経由の817への電源供給は常時行うように配線の変更をしています。
  • なんでこんなことを言っているかというと、アサップシステムのこの電動ファンを付けるには、内蔵電池ボックスまたはニッケル水素電池を取り去ることになるので、817本体の外側から電源の供給を行うことになります。普段の想定は、「『安定化電源』→アサップシステムの電動ファンのユニット→817背面の電源端子」です。出先で運用する場合は、『安定化電源』が『シガーライター』に代わるか、または『外部に用意したエネループ10本の電池ボックス』ということになります。例えばエネループから供給した際に、オリジナルの配線だと電動ファンが必ず回ってしまうので、そうならないように外部から817に至るラインは直結、電動ファンはスイッチで冷やしたいときだけ回す、というように配線変更したわけです。
  • 【7/4追記】実はこのアサップのファンなんですが、少しTipsがあります。電池蓋の代わりにこれを取り付けるんですけど、寸法に余裕がありすぎてガタが出るんです。具体的に言うと、これを取り付けた状態でダイヤルを回そうとすると、ガタガタと揺れて快適に操作できません。そこで、薄いゴム板を挟みます。ゴム板ですが、適当にホームセンターで売っているものでいいです。21mm(1mmを2mmに訂正)程度の厚みがあって、挟むことによりガタを吸収できれば良いです。厚すぎると蓋が閉まらなくなるので注意ですね。で、ゴム板を程よい大きさに切って、ラッチの部分に挟まるようにハサミで切れ目を入れます。
  • 【7/4追記】そして、ラッチに切れ目を差し込んで、閉じると。そうすると、ガタがなくなります。

純正のTCXOユニットやオプションのフィルタは既に販売終了していて、オプションのCWフィルタは法外な値段がついてたりします。TCXOについては第三国での安価なものが出回っているので、それに興味はあるものの、周波数がズレたら合わせなおせば良いと考えてしまうので、今すぐの導入には消極的です。また、フィルタについてはSSB用に限ればまだINRADのメカニカルフィルタが入手可能です。まずはとりあえず手持ちのCFJ455K13を標準のCFJ455K14と比較してみましたが、受信では少し広くなったような気がするものの、送信では差がほとんどわからないといったところです。K13って一時期IFが455kHzのHF機でSSBの送信音を良くするために交換するのがTipsとしてありましたけど、それほどでもないですね。それとも817だから差があまりないと感じるのでしょうか。 



SSBについては、マイクをMC-90にするだけでそれなりの音が出ます。フィルタをINRADの2.9kに交換すればもっと良くなるでしょうけど、かつて一度やってますし、今はもういいかなと。

問題はAMでした。前回触ったときにはAMでの送信には興味がなかったので知らなかったのですが、これがなかなかの曲者です。F長押しメニューのAMマイクゲインはデフォルトでは50という数値に設定されています。また、AMのキャリアレベルについてはABC起動メニュー#69でうちの個体は224と設定されていました。AMというか低電力変調の無線機の場合、キャリアをSSB時の出力の1/4程度に抑えて、変調は気持ち深めというのが原則ですが、まずはそのまま送信してみると、モゴモゴといった浅い変調で、しかも歪んでいます。

そうか、一時期の八重洲の無線機ってAMはダメって話だったっけといった朧気な記憶をもとに、webで調べ始めると、

  1. ABC起動メニューの#69のAMキャリアレベルを190程度まで下げてみる
  2. その上でマイクゲインを下げてみて歪まないポイントを探す

といったことで対策していることがわかります。

キャリアレベルを下げるのは原則どおりですから即マネをしてみます。あと、歪っぽい音はマイクゲイン過多というのも納得できるので、これもマネします。で、送信をしてみると、今度は「わんつー、わんつー」の二回目の「わんつ」あたりで通過型パワー計の針が落ち込みます。ALCが効いたようです。このALC、自然と全体のマイクアンプ段からの出力が抑えられるのではなくて、しきい値を超えた大入力をポイントで抑えているようで、「わんつー」が「 ん っー」になってしまって台無しです。それではということで、

  • ABC起動メニュー#65の50MHzのALCの戻りのレベル調整を変更してみる

ことを試してみたものの、数値を弄っても「 ん っー」は改善されません。ALCの戻りを弄るのも、キャリアレベルを下げる方法はやめることにします。もう一つの対策としてwebで諸氏が挙げられていた

  • ABC起動メニュー#69のAMキャリアレベルを240程度まで上げてみる

ことをやってみます。キャリアレベルを下げることについては、webの諸氏はいわゆるマイナス変調対策と説明されていて、そのとおりだと私も思うのですが、うちの個体はキャリアレベルを下げることによって、「わんつー」と送信したはずの信号なのにALCが盛大に効いて「 ん っー」と出力がカットされてしまうことが大問題なので、多少カットされてもキャリアが減らないように、上げてみるという方向です。マイナス変調上等です。

そうしてみると、ちょっと喋る限りはマイナス変調になってしまうのは仕方ないとして、「わんつー」でALCが効いても「 ん っー」にはならず、それほど出力も落ち込みません。ちょっとシメシメです。

ここまでの総括ではこんな感じです。

  1. AMキャリアレベルが標準の224
  2. AMマイクゲインは標準の50 
  3. その結果はモゴモゴ歪み気味のあまり好きじゃない音【ダメ】
  1. AMキャリアレベル190
  2. AMマイクゲインを20
  3. その結果、マイナス変調は解消したが、大入力時に出力が落ち込み「 ん っー」
  4. ならばALCの戻りを減らしてみても変化なし 【ダメ】
  1. AMキャリアレベルを240
  2. AMマイクゲインを20
  3. その結果、マイナス変調だけど大入力時にも出力の落ち込みはなし【行けるか?】

【行けるか?】というところで、AMマイクゲインを歪まない最大値を見つけて妥協しようかと思ったのですが、「マイクアンプ段からの入力をコンスタントに増やして、常にALCが効いているようにしたら出力が落ち込むということはなくなるのでは?」と思いつき、マイクコンプレッサを使ってみようと思い立ちました。

少し前にジャンクで「動くかも?」と買って、ちょっと電源を入れてみたら案の定動かなくてそのまま死蔵していたカツミのマイクコンプレッサを持ち出して弄り始めます。


 

電池を入れて電源を入れてみると動作がおかしかったのですが、そのうちにその理由はメインのスイッチの接触不良であることが判明し、スイッチの交換によりまずは動作できました。この個体はトリオ4ピン仕様という触れ込みだったので、TR-2300を持ち出して繋いでみます。MC-20→カツミMC-702→TR-2300の送信信号をTM-833でモニタしてみるとこれが見事にサイテーな音です。コンプレッサは生きています。4ピンマイクの出入りで動くことが確認できたので、ケンウッド8ピンマイク仕様に変更して、(八重洲8ピンモジュラー変換経由で)817に繋いで試してみました。


 

まずはSSBでテストしてみたところ、少し圧縮気味の音にはなりますが、TR-2300のFMで試したときに比べるとそれほど悪くないです。リニアを繋いだりパワーを出せるときに使うなら軽くにしろということなんでしょうけれど、使い方次第でアリかなと思います。

次に問題のAMです。まずはキャリア減らし方向のテストですが、見事にダメでした。常時入力過多傾向でALCが効きっぱなしというか送信信号が抑えられっぱなしになります。話になりません。次にキャリアを増やす方向でのテストですが、こちらは程よく変調が深いまま、隣のTS-590からは途切れずに私の声が聴こえます。いけるかも?と期待してしまいます。ただ、まだ客観的に信号を聴いてもらったわけではないので、この前者と後者、

  1. AMキャリアは増やす設定(マイナス変調上等)
  2. AMマイクゲインは20
  3. マイクコンプレッサON

と、

  1. AMキャリアは増やす設定(同 上等)
  2. AMマイクゲインは標準の50の標準状態
  3. マイクコンプレッサOFF

との差がどの程度あるのかというところを比較してみたいと思っています。 ちらっと自分の声を隣のTS-590で聴いた感じだと、マイクゲインを下げてコンプレッサを入れたほうが「歪がひどくならずに音の通りが良い」感じはします。プラシーボかもしれませんが。

【7/4追記】隣に置いたTS-590で聴いただけの比較ですが、端的にいうと、マイクゲインを上げたときと、スピーチプロセッサ(この場合はスピーチコンプレッサですね)を入れたときの違いがあるだけです。どちらかが良いという感じでもないです。なので、平均的な圧縮音声を期待するならコンプレッサ、やさしくしゃべってピークを出さないならマイクゲインを上げる、ということになるでしょう。どのみち817のAM送信音はどうあがいても 期待してはいけない というのが結論になりそうなので、このあたりはお好きに、コンプレッサをいれて平均電力をあげるということをやってみたい(ただし音質の改善があるわけではない)なら使ってみたらどうでしょう、という感じです。

私ですか?せっかく直ったカツミのスピーチコンプレッサを弄るのが面白いので、音質が悪くならない程度に軽く使ってみようかと思っています。 これTS-600で使ってみたいなと思いつつ、同時に600は送信音を期待しちゃいけない無線機だったと思いなおし…


 

しかし、こんな感じで試行錯誤していますけど、IC-705ならつるしのままで、良い・聴きやすい音が出るんだろうなと思います。

今回、817については悪あがきをして次善の設定を見つけようとしていますが、あまり大きな期待はせずに、小さな無線機を性能の範囲で楽しむという方向で考えるべきなんでしょうね。実際、バンド切替スイッチを押したときに、中からリレーの小さなパチパチという音がする様子はかわいらしいですし。

2024年5月15日水曜日

そして令和6年のFT-690mk2です。(続き)

周波数を読める50MHzハンディ機!の続きです。

ここからはノウハウ編ですね。

FT-690mk2を手元に置くにあたりあったほうが良いもの

本体(当然ですね)

この機種は電池ボックスの出来がイマイチで、電池の出し入れに伴う開閉を繰り返すとプラスチックのフレームが割れます。そんな電池ボックスですが、あったほうが良いです。

メタル8ピンのマイク、八重洲純正には拘らない

純正のダイナミックマイクは音が良いのか悪いのかわかりません。690mk2のマイクメタル8ピンコネクタの2番には+5Vが来てるので、ここはエレクトレットコンデンサマイクを使いたいところです。変換コネクタを作ってケンウッドのコンデンサマイクかな。

 

上の画像では変換コネクタ経由でMC-90を繋いでます。小さい無線機にリニア+MC-90って好きです。 

フロントパネルのBNCジャックに取り付けるアンテナ

BNCの50MHz用の短縮ロッドアンテナです。これが無いとさびしいですね。本体に一緒に付いてこないなら探すのが難しそうな気がしますが、実は現行品のサガ電子のSUPER ROD-2があるので、妄想する屋外での運用は夢のままには終わりません。

リニアアンプ

自宅でゆっくり運用するときのためにリニアはあったほうが良いです。電池ボックスを外してその代わりに後ろ側に取り付ける10Wリニアアンプ、FL-6020がありますが、私はこれではなく、HL-66Vを使っています。2Wで押しても20-30W出ますし。

当然ながら、HL-66Vなど汎用のリニアを使う場合は、フロントパネルのBNCジャックからの出力をリニアに持っていくので、両端がBNCプラグとMコネのプラグの中継ケーブルが必要です。

HL-66Vの場合は、リモートコントロール端子に送信時に+3~9Vを加えると連動できるピンがある(よくある送信時にアースに落ちるピンもありますが、今回はTXBを簡単に取り出せるので)ので、690mk2のTXB端子(上側蓋を開けると奥に純正リニアコントロール用の端子があって、その真ん中がTXB)を伸ばして、トーンエンコーダ用の穴から電池ボックスを通して後ろ側に伸ばしたところにミニジャックを付けて、これ経由でコントロールすることにしました。

690mk2のTXBは13.8Vなので、何か負荷を入れて電圧を下げたほうが良いです。私の場合はムギ球代替品の電球色LEDを入れていて、閉じられた電池ボックスの中で無駄に光っています。

 ※電池ボックスの中はサビサビのガリガリなので撮影を省略しました。

こうすると、電池ボックスを外したり、中を触れないのでは?と思うところですが、一度このように配線した後は、電池ボックスを外すことはありません。

じゃ、電池運用の場合はどうするのかというと、電池ボックスのDCジャックは生かしてあるので、普段は安定化電源からDCジャック経由で690mk2への電源供給をし、電池運用時はこのように外付け電池ケースに単三エネループ10本12Vを装填して、これをDCジャックに繋いで使います。
外部電池ケース採用案はニャンダース氏よりお知恵をいただいてます。これで心置きなく単二電池用の部品を取り去って、このような使用法に至ることができました。

電池ボックスのDCジャックですが、センターマイナスなので注意してください。どうせ改造するならセンタープラスに変更するのもアリですが、私の場合は安定化電源用のプラグや外付け電池ケースはセンターマイナスになるように配線しました。

肩掛けベルト

手芸屋さんに売っている平らなベルトや留め具を使っても良いと思ってます。私の場合は、かつてRJX-601のために買った手芸屋さんベルトを流用する予定です。


【FT-690mk2のクラリファイヤについて】

この機種はSSB/CW時には最小25Hzステップなので、ほぼゼロインできます。なのでゼロインのためにクラリファイヤを使う必要はないと思っています。また、ズレた相手局を追いかけるためにクラリファイヤを使う場合がありますが、私の場合、習慣的にこれがないんです。IC-502でデビューして以来、ダイレクトにダイヤルで追いかける癖がついてしまっているので、クラリファイヤを使うことはほぼありません。

で、この690mk2のクラリファイヤは仕様上常時ONになっています。つまり、誤ってクラリファイヤつまみがセンター以外の位置にある状態だと、送受信アントランシーブになってしまいます。クラリファイヤのON/OFFができれば良いのですが、その機能はありません。また、このクラリファイヤつまみのセンタークリックが柔らかく、知らないうちにセンターから外れていることもあります。なんで、八重洲はつまみを引くとONとか、もう一手間かけなかったのかなと。

さらに続けますがw、このクラリファイヤつまみですけど、回そうと力を入れるだけで周波数が動きます。(690mk2から音楽を流して、隣の無線機でゼロインして、隣の無線機で音楽を流して、690mk2で音楽がちゃんと聴けるかという方法の)送受信鳴き合わせチェックのときにわかりました。なんかイヤな感じです。クラリファイヤのON/OFFがスイッチでできれば気にしないのですが、常時入った状態でズレる可能性があるというのは、古い無線機だからということをさし置いてもちょっと困ります。

私の場合はこれがイヤで、本体底面の蓋を開けてアクセスするPLL/PAユニット基板のJ05を抜いて、クラリファイヤつまみへの配線を外しました。クラリファイヤの機能は無くなりますが、このつまみが原因でアントランシーブになるのはもっとイヤなので、これでとりあえずの対策としています。

テクニカルサプリメント(mods.dkにFT-690R2のものがあります)にPLL/PAユニットの回路図などが出ているので、ご興味の向きはどうぞ。

PLL/PAユニットの裏側にアクセスして、送信時もクラリファイヤつまみが生きるようにできれば、送受信周波数ともにつまみ位置とともに動くからOKと思ったのですが、不器用なので、寄木細工のように入れられている基板を外して、その裏側へのアクセスの過程で壊す可能性が高いのでやめました。

2024年5月18日追記 コネクタをまた挿して、クラリファイヤ機能を復活させました。送信してると熱で周波数がズレて、お互いに周波数を合わせあってるうちに、これクラリファイヤ使ったほうが良いのでは?と思い至り、復活です。

2024年5月14日火曜日

周波数を読める50MHzハンディ機!

6mハンディ機のないものねだり集 に書きましたが、私の世代が知る50MHzハンディ機に関する印象はこんな感じです。

水晶発振の場合は周波数を読めますが、VFOの場合は大雑把な目盛を参考に勘を鍛えるしかないですし、VXOの場合はVFOよりはマシなものの、それでも目分量でVXOダイヤルを回して選局することになります。

1978年にRJX-610が発売されて、ハンディ機としては初めてデジタル表示で周波数を読めるようになりましたが、この当時は50MHzSSBの平日の夜は混雑して、私が住んでいた1305市付近では50.600以上の周波数でようやく安住の地を見つけるのが通例でした。なので、RJX-610では役者が不足していたんですね。

この頃のわたくしは、自分の部屋におさがりのIC-502を持ち込んで、窓際に1/4λのホイップをガムテープで留めて、中学校の同級生や市内の高校生と夜な夜な喋っていたものでした。502は50MHz台の1MHz幅をフルカバーしていたので、上のほうで待ち合わせをする場合でも追いかけられたんですね。しかし、周波数を読めないので、「50.580で待ち合わせだよ」と言われても自力ではそこに行けないので、前の晩にラグチューしたままの周波数でダイヤルをいじらずに翌晩待ち合わせなんてこともありました。仲間の一人がIS(インターバルシグナル)代わりに音楽を流して、ゼロインして聴きながら待つなんてこともありました。そんな頃、502のダイヤルを眺めて、周波数を読めると楽なんだけどなあと思ったものです。

その数年後、昭和57年の暮れあたりかな、近所の高校生にIC-505を貸してもらったことがあります。PLLのデジタル表示でAM以外は出られる、505の場合は電源があれば10W出るしとすごいなと思ったものです。でも、IC-551と同じで、SSB時の周波数ステップが最小でも100Hzなので、ゼロインもできないし、肝心の無線機としての機能はまだまだと思ったものでした。

で、FT-690mk2です。


この機種、正直なところノーマークでした。大学時代に中学の同級生(この同級生が中学と大学の同級生だったりするんですが)の家に行くとこれがあって、小さいし、周波数は読めるし、SSB以外のモードも出られるし、周波数ステップの切り替えが面倒そうだけど、中学の頃にこういうのがあればなあと思いました。でも、そのころは430MHzFMでラグチューしたり、車に無線機を積んで走り回ったりと無線がからんでも別の興味に移っていたので、欲しいというところまでの熱意は湧きませんでした。

余談ですが、この同級生、ピコ6のオプションを集めてセットにしておかもちのようなラックに収納してみたり、430出ようよと誘ったことがありましたが、それに応じてマランツのC4800を買ってみたり、ハンディトーキー型のハンディ機を何台も持っていたりと、小さい無線機が好きでした。少し前だったらFT-817や818、今だったらIC-705を嬉々として使ってるんだろうなと想像しています。元気かな。

話は690mk2にもどりますが、就職した後、平成に入った後あたりでしょうか、何かのついでに秋葉原のロケットの店頭で見かけて、この機種買っておいた方が良いかなあなんて思いつつも、歩き出したらもう忘れてといった具合で、令和6年の今まで忘れていた存在でした。

長年、IC-502、TR-1300やRJX-601のように、周波数が読めない無線機に興味が行っていたので、肩掛けスタイルのハンディ機で、現代においても実用になるのってあるのかなと興味を持ち、少し調べてみると、

IC-505(FM/SSB/CW)

FT-690(FM/AM/SSB/CW)

FT-690mk2(FM/SSB/CW)

といった機種が浮かびます。505や690無印はSSB時の最小ステップが100Hzなのでイマイチです。反面、690無印の場合はAMにも出ることができます。690mk2の場合はSSB時25Hzステップなので、これなら使えそうということで探してみることにしました。

リニアアンプFL-6020とセットだったりセットじゃなかったり色々ですが、1万円以下で入手できるんですね、面白がって触ってみるくらいならお手頃です。

 

続きます。

2024年5月13日月曜日

ケンウッド純正マイクの評価

以前友人と行ったトリオ・ケンウッドのマイクの評価です。Hi-FiのSSBは目指していません。送信フィルタが広いならそれなりに、狭くてもそれなりに聴きやすい音だと良いなというポイントで評価しています。

画像がないのでつまらないですが、「kenwood MC-10」などと画像検索してみてください。だいたいヒットすると思います。

 

・MC-10(4ピン)(小判型。オバQとも呼ばれる。VU機向けの500Ω版とHF機向けの2kΩ版がある)×

・MC-20(4ピン)(TR-1300ほかAction☆Handy、TR-2300やTR-7500/GRの純正)ゲインはある。FMで使うと音は悪い。AMやSSBだと違うようだけど、良くはない。MC-20の場合は経年変化で「聴けない音ではない」場合もあるので、どうしても使いたい場合は個体差を含めて要検討。個人的評価では×だけど、このマイクのデザインが好きな人は多いと思う。私も好き。

・MC-30S(4ピン)(TS-120世代のノイズキャンセルマイク)×、話にならない。

・MC-35S(4ピン、30Sと同型のハイインピーダンス版)使ったことがないので不明だが、MC-30Sと同じなら期待しないほうが。

・MC-40(6ピン。MC-43Sの6ピン版)MC-43Sと同じで×。6ピンの純正はこれしかない。

・MC-42S(8ピン。MC-43Sのハイインピーダンス版だと思い込んでいたのですが、ヤフオクで見かけたこのマイクの取説ではTS-780や660に使えると書いてありました。何か配線が違うんですかね。インピーダンスは500Ωでした。)一時期持ってたけど使った記憶がない。

・MC-43S(8ピン。現行品の8ピンダイナミックマイク)ゲインはあるが音は悪い。話にならない。×

・MC-44(8ピンorモジュラー。TM-833純正、通称しゃもじ)△未満。エレクトレットコンデンサマイクなのに音が薄っぺらい。薄っぺらいのは833で使った場合かもしれない。要追試。マイクアンプ段の出来が良いTR-50で使ってダメならやっぱりダメ。

・MC-45DM(8ピンorモジュラー。MC-44のDTMF付き)△未満。MC-44と同じ。

・MC-46(8ピン。TR-50純正やSMC-31と同型筐体のエレクトレットコンデンサマイク、DTMF付き)○、ただしHF機には回り込みが起きることもあり向かない。

・MC-47(8ピン)TS-50/60純正。中身が43Sと同じなら期待しないほうが良いが。

・MC-48B(8ピン。MC-46と同じ、型番だけ違う。仕向け地違い?)〇

・MC-49(モジュラー)MC-44しゃもじのモジュラー版説あり。詳細不明。

・MC-50(4ピン)×、ただし、何を使っても音が悪いTS-600にはこれで良いかも。大昔、50MHzにFT-625Dで出てた頃は、アツデンDX-857からMC-50に変えて使っていました。音の悪さ加減が良いスピーチプロセッサになってたのかしら。音の良さよりも飛びに寄与するマイクとして使ってましたね。

・MC-60(8ピン)×、カッコは良いのだが音は悪い。中古でMC-90を探すべき。

・MC-80(8ピン)△、HF機にも使えるコンデンサマイク。マイクアンプ内蔵で深い変調をかけられる。でもFMで使うのが良いのでは。

・MC-85(8ピン)立派なメーターが付いている。使ったことがないので不明。

・MC-90(8ピン)◎、ゲインは無いが、音は良い。1石マイクアンプと電源用の006Pを台座に入れて使えば良し。2種類あるマイクのエレメントカバーはスリットが少ないほうが音が良い。

・型番不明のTR-50純正(8ピン。MC-48Bと同じ筐体のダイナミックマイク)音は良くない。×

・型番不明のTW-4000純正(8ピン。MC-43Sに機能追加ボタンが付いている。)×。MC-43Sと同じ。

 

私見:

○MC-90にマイクアンプを内蔵させれば万能
HF機からFM専用機まで、ハンディ機でもこれで行くのが猛者。でもエレクトレットコンデンサマイクとは周波数特性が違うので、変調の深みやパンチはない。マイクアンプを入れても上品な音で物足りないと感じるかもしれない。

○ハンドマイクならMC-46やMC-48Bが良い。エレクトレットコンデンサマイクなので、メタル8ピンなどマイクコネクタまで電源が来ている機種には使える。ただし、国内ではここ20年で2回しか見たことが無い。ebayでは見かける。同じ筐体のハンディ機用のマイク、SMC-31はおそらくエレクトレットコンデンサマイクだと思うんですけど、スピーカを取り外して試してみたいところです。

○8ピン用としてHF機からFM機まで使えるMC-43Sは、音はサイテーだけどケンウッドユーザの場合は一本持っていると助かるときがある。ダイナミックマイクなので電源無しでも使える。


わたくしの場合:

〇MC-90の台座に1石マイクアンプと006Pを入れてます。台座底面のスイッチは音質の切替ですが、音質切替基板を取り去ってマイクアンプのON/OFF/スルーで使っています。ケンウッドのHF機の場合はマイクアンプの電源は入れずに直結で、SSB以外でゲインが欲しい場合にはマイクアンプをON。そのほか、V/UのSSBが出る無線機でも強電界のラグチューにも使うことがあります。かつて、FT-817にINRADのSSBワイドフィルタとリニアアンプをつけて、これにMC-90で出て面白がったことがあります。TR-1300でもリニアで相手局まで強い信号を届けられる前提なら悪くないですよ。

〇TM-833などでのFMラグチュー用には、ケンウッド純正マイクではなく、IC-SM2のマイクエレメントを松下のものに交換したものを使います。

〇TR-851などV/UのSSBが出る無線機では、MC-46やMC-48Bを使うと、ゲインはあるし、それなりにアリな音になります。FMラグチューもこれでも良し。無難なマイクです。

2024年4月16日火曜日

6mハンディ機のないものねだり集

私の場合、電話級をとった前後、いちばん無線機を触っていた時期に目の前にあったのがIC-502でした。

ご存じのとおり、502は周波数が読めなくて、温まるまでの間はQRHが大きいという印象の無線機です。これを触りながら、周波数を読めたらずいぶん違うんだけどなと思ったものでした。

そこで、記憶と少しのインターネット上の調査をもとに、私が知っている範囲の6mハンディ機のないものねだり集というのを書いてみました。

---TR-1100B以前は省略

TR-1200 FMでスケルチが使えない、52.5MHzより上に出られない
RJX-601 周波数を読めない、キャリブレが50.0MHzで、51のメインがわからない
IC-502 周波数を読めない(より深刻)上、QRHが大きい

---ここまで周波数を読めない

TR-1300 VFO-40なしでは50.258までしか出られない
RJX-610 デジタル表示だけどQRHが大きい

---PLL化以降

IC-505 SSBが100Hzステップでゼロインできない、AMモードが無くなったBFO入りでしか聴けない、FMがオプション(505はIC-551と違ってA3Hも無くなっちゃったんですね)
FT-690 SSBが100Hzステップでゼロインできない
FT-690mk2 SSBが25Hzステップになったものの、AMモードが無くなった

---以降、いきなりFT-817に至る


※CQ-Pシリーズとピコシリーズは除外してます。

〇CQ-P6300はTR-1200やRJX-601の販売時期に出ていたので、購入する際の比較に挙がったと思うのですが、他の6400(アナログVFOでAM/水晶発振でFM)と6500(アナログVXO、CW/SSB)はそれぞれの機構の旬から遅れていたので、特別この機種が好きという理由がないと買う人はいなかったのかなと。ツクモの広告には安い値段でよく出てましたよね。私は6400の値段をみて欲しいと思いつつも、やっぱり古いんだよなあと思って食指が伸びないよう抑えていました。

〇ミズホのピコシリーズはまた一般的なハンディ機の購入動機とは違うかなと。キットを作ってみたいとか、高田先生のファン(私もそうですけどね)に訴えるものがあって、長期にわたり販売されてました。 ピコシリーズの場合は「ないものねだり」ではなく、自分でなんとかする、または、これはこういうものだと割り切る向きが多かったのではと。