AnyTone AT-D168UVはDMRトランシーバです。 にゃん氏がポチったのを知り、面白そうだと追いかけてみました。
【ここから本項はDMRとはというおはなしになります。無線機をいじりはじめて理解した内容を書いてみました。】
導入経緯がよくわからなくJARLのデジタルレピータを独占しているD-Starや、それに対抗しつつも不遇の八重洲のC4FMとも違う、業務機用途から普及してきたデジタル通信の方式です。DMRの電波形式はF7Wで、他のデジタルの電話と同じです。広帯域の電話と全電波形式のところに出られます。国内のデジタルのレピータは特定の方式しかないので、DMRのレピータはありません。シンプレックスでやりとりするか、デジピータがVoIPの周波数帯に開設されているので、それを利用するということになります。
DMRというデジタルの通信方式とは、というところは
アマチュア無線のデジタル化 第2回 デジタルの通信方式FDMAとTDMAについてあたりを読んだほうがわかりやすいと思います。でも、この記事はFDMA、D-Starが優位であるように書いてありますね。D-StarはIC-9700に実装されてますけど、信号が強くても音質がイマイチなので、私はあまり好きではありません。
上のリンクよりも、後で見つけたこっちのほうが中立的な書かれ方をしてます。ついでにCDMAとの比較もあります。こちらのほうが参考になると思います。
多元接続FDMA/TDMA/CDMA―無線通信における周波数帯域幅の有効利用(1)
で、DMRと呼ばれているのは、TDMA方式であること、送信するとほぼ同時にタイムシェア(以下ではタイムスロットという表現をします)で受信もできるので、 一つの周波数でレピータのような機能が実現することを理解できれば良いと思います。また、DMRの音質は「デジタルにしては」悪くないと思います。
そもそもDMRって何の略なんでしょう、昨夜初めて知りました。
Digital Mobile Radioだそうな。ずいぶん一般的な名前だから、TDMAのこの方式を進める機関?団体?が早い者勝ち的に先に使った名前なんでしょうね。FDMAだって、CDMAだってデジタルだし、移動して通信できるもんね。
このTDMAのタイムスロットの機能を使ったのがDMRのデジピータです。29MHzFMのアナログのデジピータは、自分がしゃべったのをデジピータが録音、それをデジピータが再生して送信、交信相手がそれを聴くという手順です。次に他局がしゃべったのをデジピータが録音、それをデジピータが再生・送信したのを自分が聴いてという繰り返しです。DMRのデジピータは、このようにオウム返しではなく、レピータのようにほぼリアルタイムで自分の信号が第三者に中継されます。「ほぼ」としたのはデジタルのエンコードとデコードの分だと思うのですが、その分は遅く感じます。
その上で、DMRで通信する際の必要な要素が3つあること、その3つはデジタルの復号キーで、「トークグループ」「タイムスロット」「カラーコード」というものがあって、これの送信側と受信側の設定が一致しないと復号できないので通話にならないことになります。少し乱暴な解説になりますが、おおむねこんな感じで理解しておけばよいと思います。私自身もそうですし。
その3つの復号キーですが、こんな感じです。
〇トークグループはキーの桁数は多く取れます。簡単に誰でもわかりやすくするために数字1桁で使う例があります。というか、国内でそのへんの人とQSOをするなら「1」で良いです。
〇タイムスロットは通常数字一桁で1か2を使います。TDMAの時間の2分割を指しているんだと思います。これも通常1を使います。シンプレックスのとき、同じ周波数で3つの復号キーが一致している2つのグループがあるとします。そのままだと混信するわけですが、一方のグループがタイムスロットを2にすれば、TDMAの時分割の機能で同一周波数に2つのグループが共存できます。他方のグループはQSOは聴こえない(確かめてませんが)んでしょうね。おおむね「1」で良いと思います。
〇カラーコードも数字一桁です。1か2でしょうか、国内デジピータで3を使っている例がありますが、レアです。 これも1を使うのが無難でしょう。想像ですが、「トークグループ」「タイムスロット」が主要な復号キーで、それに加えて予備的に「カラーコード」というパラメータを加えたのかなと思っています。カラーコードといっても色を指定するわけではないのはちょっと残念です。 これもおおむね「1」で良いと思います。
この部分、めんどくさいですけど、もうちょっと続けます。
「トークグループ」と「カラーコード」は復号キーで、この二つが送信側と受信側が一致しないと復号できません。「タイムスロット」も復号キーの一つと考えられますが、これの目的はTDMAの時分割機能を使うためのパラメータで、同一周波数で共存させるためのもの、ということだと思います。
例を挙げると、同じ周波数に都内と神奈川でそれぞれQSOしている集団がいるとします。双方タイムスロットが同じ1だとして、トークグループとカラーコードがそれぞれ別だとすると、お互いに復号(復調と同じだと思ってよいでしょう)はできないですが、一方が他方の信号がある?と感じはする、他方の信号が原因で自分の仲間の誰かの信号が受信しずらい・できないという状況にあるとします。そのときに、都内の集団が「混信があるっぽいからタイムスロットを2に変更しようよ」と仲間に呼びかけ、都内の局だけはタイムスロット2に変更すると、そのあとはTDMAの機能で、タイムスロット1の時間帯は神奈川の局が、タイムスロット2の時間帯は都内の局が使うことにより、同一周波数で共存できる、というものだと想像しています。
タイムスロット1とタイムスロット2の切り替えの時間はごく短時間で、自分や仲間の信号がタイムシェアリングしているとは意識しなくて済むくらいのものなのでしょう。実際にDMRの信号をFMで聴いてみると「バババババババ」と間欠的な音に聞こえます。他のデジタル方式みたいに「バーーーーーーーー」と連続した音ではありません。このあたりが時分割、TDMAということなのでしょう。全部想像ですが。 (関西弁で「知らんけど」と同じ締めです。)
余談も余談なのですが、
TDMAの時分割の話で、タイムスロットを使い分けて同一周波数で複数のQSO集団が共存できるというのは理屈としてわかるんですけど、
送信と受信を同じ周波数でやっているデジピータってどうやってるんでしょうね。デジピータ側は全二重通信でタイムスロット1とタイムスロット2を同時使用しているんだろうな。でも、そうするとハンディ側はタイムスロット1で聴いているからタイムスロット2の部分は聴こえないはず…
という疑問をもっていたんですが、AT-D168UVのメニューを触っていたら、チャンネル設定の中にDMRモード設定というのがあって、「Repeater」が選ばれています。DMR時はシンプレックスでしか使っていないのに、これで良いの?と取説を見てみると、「Repeater」選択時にはレピータやホットスポット(デジピータも含まれますね)で同じスロットで送信と受信をするのを許すと書いてあります。
整理すると、デジピータ経由でQSOするというのは、
(1)タイムスロット1で自分からデジピータにアップリンクの送信
(2)タイムスロット2は誰か(自分やデジピータやQSO相手以外)の時間
(3)タイムスロット1でデジピータからのダウンリンクで自分の中継音声をQSO相手に聴かせる
(4)タイムスロット2で誰かの時間
(5)再びタイムスロット1で自分のアップリンクの送信
ということの繰り返しなんですね。目から鱗です。TDMAえらいな。
シンプレックスのときは、タイムスロット1だけを使って、QSOする同士が、一方がデータを投げ、他方がそれを受け、他方が投げ、また一方が受けというやりとりだけで、デジピータやレピータが間に入りません。なので、相対的に考えると、シンプレックスはデジピータ経由の倍の速度でデータの送受信(というかQSOですね)が行われ、デジピータ経由のときは、間にデジピータの送受信が入るのでその半分の速度で自分とQSO相手の間のデータの送受信(というかQSO)が行われるということが考えられます。
続きます。
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